在来種 越年草 10〜40cm 花期3〜6月 別名ペンペングサ
「ナズナ」は「撫で菜(なでな)」からきているという説がある。撫でたくなるほど可愛らしい草だ、という意味だ。また「夏無(なつな)」からきているともいう。これは「ナズナ」が夏になると枯れて無くなってしまうからだ。
「セリ、ナズナ」で始まる「春の七草」の一つとして「ナズナ」は知られているが、「七草粥」が行事として定着したのは鎌倉時代のことのようだ。「秋の七草」が万葉集に登場してから500年後のことである。「撫でたくなるほど可愛らしい」のだが、平安の時代には左程注目されていなかったようである。「古事記」「日本書紀」には登場しておらず、清少納言の「枕草子」にようやく記述がある。けれども同年代の「源氏物語」には出てこない。「七草粥」が宮中の行事に定着しているのなら、それなりの記録が残っているはずだ。深江輔仁の「本草和名(918年)」では、薺は「和名奈都奈」、源順「倭名類聚抄(934年)」にも「和名奈都那」とある。平安時代は「なつな」だったようである。
アブラナ科に属しているので食べることが出来る。夏には枯れてしまうが、秋が深まった頃に種が発芽し葉を茂らして越冬する。昔は冬場の貴重な食料として重宝されたようである。江戸時代の本には種を蒔いた育てた方が、美味しいナズナになると書いてある。また今でも中国や韓国においては立派な野菜であり、特に韓国では春にナズナの市が立つほどである。韓国料理・ナズナで検索するとナズナ料理がたくさんヒットする。
2010年秋に宇宙ステーションで植物を育てる実験が開始された。選ばれたのは「シロイヌナズナ」で様々な研究がなされた。これは食用としての利用を優先したわけではなく、遺伝子などの解析が容易だからということらしい。でも、いざとなれば食えるからなあ。宇宙で生野菜を食うなんて宇宙飛行士にしてみれば、とてつもなく贅沢なことだろうし。宇宙で野菜を栽培するような時代になったら、最初に選ばれる植物は食べられる雑草ではないだろうか。野菜はひ弱で、もし病気が発生するようなことがあれば全滅の恐れがある。しかし雑草ならば病気に強いし繁殖力もある。
「ペンペングサ」の名前の由来は、種子が三味線のバチのような形をしているからというのはよく知られた話である。下の写真は「マメグンバイナズナ」です。そう呼ばれるのは種子の形が相撲の行事が持つ軍配に似ているからである。北アメリカ原産の帰化植物です。
左:ナズナ 右:マメグンバイナズナ 種子の形が違います。
「マメグンバイナズナ」は茎が分岐して高さが1m以上にもなります。日本の「ナズナ」とはまるで違います。
写真を追加しました。(2015.12.12)
お詫びと追記(2016.3.6):正確に表記しますと「シロイヌナズナ」はシロイヌナズナ属、「マメグンバイナズナ」はマメグンバイナズナ属ですから、「ナズナ」のナズナ属とは違います。すべて「アブラナ科」に属していますが、「ナズナ属」の仲間のような誤解を与える表現をしてしまいました。申し訳ありません。
写真:zassouneko