セイヨウタンポポ(西洋蒲公英)/キク科/タンポポ属
ヨーロッパ原産の多年草 15〜40cm 花期5〜10月 別名フチナ、グヂナ、ツヅミグサ等 英名はdandelion
「セイヨウタンポポ」の特徴は上記の写真でもわかるように「がく(総苞)」の部分が下の方へ反り返っていることである。日本のタンポポはそうなっていないので区別するのは簡単だ。この花を紹介するにあたっては複雑な思いもあります。タンポポは春の代表的な雑草の一つであり、おそらく最も有名な雑草でしょう。日本の風物詩のようなものだが、いつの間にか外来種に置き換わろうとしているのだ。このままでは日本のタンポポが消えてしまう。
「セイヨウタンポポ」に対して「ニホンタンポポ」と呼ぶ種はありません。「日本タンポポ」と書けば総ての日本産のタンポポのことになる。蒲公英(漢名)に対して日本では深江輔仁『本草和名』(ca.918)は「和名布知奈、一名多奈」、源順『倭名類聚抄』(ca.934)は「和名不知奈、一云太奈」とあてている。「ふちな」の「な」は「菜」であろう。「タンポポ」の葉は食べられます。また英名のdandelionはフランス語のdent de lion(ライオンの歯)からきている。
「タンポポ」と呼ぶようになったのは江戸時代からで、そこから急速に広まったという。「タン、ポポ」というのは鼓を打つ際の擬音を表している。当時の人はそのように聞こえたのである。なぜ唐突に「鼓」が出てくるのかというと、タンポポを使った子供たちの遊びからである。その遊びを再現してみよう。まず茎を切って5cmほどの長さにする。白い液が出てくるが気にしないように。次に空洞になっている茎を縦方向に端から1cmほど裂いていく。6〜8等分でいい。裂いたところが丸まってきていると思う。反対側の端も同様に裂く。もし丸まらなければ少し水に漬ける。これで「鼓」の出来上がり。その茎の中にうんと細い小枝を通して息を吹きかければ風車、流水におけば水車になる。かつては「ツヅミグサ」とも呼ばれていたが「タンポポ」というキャッチーな名称に負けてしまったようだ。
「セイヨウタンポポ」は明治時代に食用(!)、牧草、緑化目的で輸入。または非意図的な混入。1904年に北海道で帰化していることを確認。これは北海道でタンポポを栽培していたことも原因の一つだという。以降、全国に広がり日本のタンポポを追いやっている。また日本のものとの交雑も進み、純粋な日本産のタンポポを大幅に減らしている。
2000年になったばかりのころ長野県安曇野市にある大王わさび農場を訪れたことがある。季節は覚えていないが園内にたくさんのタンポポの花が咲いていた。ざっと見てみたが半数近くは「セイヨウタンポポ」だった記憶がある。今はどうなっているのだろうか。
※「タンポポ畑でつかまえて」に続きます。
写真:zassouneko