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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

チガヤ/最強の侵略者

チガヤ(茅萱)/イネ科/チガヤ属
在来種 アジアの温帯・熱帯に分布 多年草 30〜60cm 花期5〜6月 別名/チ、カヤ、チバナ他多数 漢名/白茅

「古事記」「日本書紀」「万葉集」にも登場する、古来からよく知られた雑草です。なかなかの人気者でエピソードには事欠かない。童謡の「背くらべ」の中で歌われる「ちまき食べ食べ兄さんが」の「ちまき」は今は「粽」と書くことが多いが、本来は「茅巻き」であり、もち米などをチガヤの葉で巻いたものを指す。残念ながら最近では笹の葉が使われることが多いという。厄除けの信仰で有名な「蘇民将来」は、「茅の輪」を持っている者は災難から逃れられるという神様からの忠告が始まりである。「蘇民将来」という人物がそのとおりにすると見事に難を逃れることができた。それを見た人々は「蘇民将来子孫」と書いたお札を戸口などに掲げるようになった(行事の一例です)。この信仰の起源にもなった話が今から1200年以上も前の奈良時代の書物である「備後国風土記」に載っている。また神社に大きな「茅の輪」を用意して、左→右→左と3回くぐり抜けると災難や病を免れるという「茅の輪くぐり」という行事も有名である。 
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深江輔仁『本草和名』(ca.918)茅根(漢名)に「和名知乃祢」とあり、また源順『倭名類聚抄』(ca.934)茅(漢名)に「和名智」と記録がある。「茅=ち」と認識され始めたのはこの頃からのようだ。

「茅」は「ち」と読んだり「かや」と読んだりするからややこしい。チガヤも「茅萱」「千茅」「血茅」と書き表すこともある。もともと「茅」の字の意味は「茅は、葉は矛の如し。故に之を茅と謂う」(李時珍『本草綱目』)にあるように、矛(ほこ)からきている。「矛」は諺の「矛盾」で有名であるが、要は剣のことである。形状のイメージは「草薙の剣」のようなものを想像してほしい。「チガヤ」の葉の形を「矛」に見立てて、それに「くさかんむり」を付けたのであろう。

「茅(かや)」と読むと他の意味にもなる。昔の農家や現在も白川郷などで見られる「茅葺き屋根」の「かや」である。この「茅」はチガヤ(イネ科チガヤ属)、スゲ=菅(スゲ属全般を指す。カヤツリグサ科)、ススキ(イネ科ススキ属)などの総称です。これらは油分があり水をはじく性質があるので屋根や笠に使用された訳です。イネやムギでは水を吸ってしまうので使えません。またカヤを「萱葺き屋根」と書くのは誤りで、萱はユリに似ているワスレグサ(ワスレグサ属)を意味します。

「茅(かや)」は地名などにも残っています。隅田川に近い「茅場町」はその名のとおり、江戸時代には屋根葺きの材料となる「カヤ」が生い茂っていた場所です。「茅ヶ崎」もそうです。

「チガヤ」は世界の侵略的外来種ワースト100にノミネートされています。出典は確認できませんでしたが「世界最強」との噂もあるそうです。それじゃ日本も大変じゃないかと思われるでしょうが、もともとは在来種です。既に日本の環境に組み込まれていますので爆発的に増えることはありません。バランスをとるサイクルが出来上がっています。

「チガヤ」の若芽(上記写真の少し前)は甘いといいます。花期は5〜6月とのことですが、こちらでは秋前にも咲きます。上記写真は9月のものです。夏が過ぎたら若芽をかじってみたいと思います。下の写真は5月撮影。

写真:zassouneko

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