北アメリカ原産の帰化植物で多年草。0.5〜1m。花期4〜7月。別名貧乏草
少し遅れて、よく似た姿の「ヒメジョオン」も咲く。この二つは名前も似ているので混同しやすい。「ハルジオン」の特徴は葉に柄がなく茎を抱き込むように付いていることと、蕾が頭を垂れたようになることだ。また茎は中空、花弁は僅かにカーブした太めの針といった感じで
、時に薄い紫色を帯びることもある。
名前の由来は「ハル(春)」に咲く「シオン(紫菀)」という意味です。この元になった「紫菀(シオン)」という草は秋に咲きます。今ではほとんど見かけませんが、人の背丈ほどに成長する薄紫色のキク科シオン属の花で、伝統色の「紫苑色」の名前の由来にもなった貴重な在来種です。「春紫菀」は「ハルシオン」と読んでもいいのですが、春と霞みでハルガスミ、子が沢山でコダクサンとなるように(連濁)、「ハルジオン」でも問題はないと思います。
漢字で書く場合に注意していただきたいのは「菀」の字です。「御苑」の「苑」ではありません。「苑」は「菀」の略字ではないのです。両者とも漢音でエン、ウツ、呉音ではオンと読みます。「苑」をエン、オンと読むと①動物を飼う所②花などを植える所③宮中の庭④物事の集まる所(文苑=文壇)、ウツだと①つもる(積もる?)、気がふさぐの意味になります。一方の「菀」はエン、オンなら①庭、庭園②茈菀で紫苑、ウツなら①茂る②心がはればれしないとなります。面白いのは両者ともウツと読むと「気がふさぐ」「心がはればれしない」という心理的な描写の意味があります。これは「ウツ=鬱」だからです(「菀は鬱なりといえり」本草綱目啓蒙 小野蘭山1803年)。
「鬱」にはネガティブなイメージが先行していますが、主要な意味は「①こんもりと茂る」です。「鬱蒼とした森」などと言いますね。「菀」には「茂る」という意味がありますが「苑」にはありません。ですから「紫菀(紫の花が茂る)」は植物の姿を正しく表している名前だといえます。また「鬱」には「②気がふさぐ」の意味があります。こちらの意味は「菀」も「苑」にもあります。「ふさぐ」は「塞ぐ」で「ふたをする、とじる、その場を占めて一杯にする」の意味です。「憂鬱」は「憂い(心配する)の気持ちで心が一杯(=木々が隙間なく生い茂る)になる」となります。
「わかりにくい説明だなあ」と自分でも思いますが、山で鉄砲を持っている「りょうし」は「猟師」で「漁師」ではないということです。ダメだ、自分でも混乱してきた。要は「菀」の字を使用するのが正しいということです。まあ一番説得力があるのは「昔からこの字を使っているから」でしょうか。
1920年頃に日本に観賞用として入ってきましたが普及はしませんでした。あまり見栄えのいい花とはいえませんからね。環境省の要注意外来生物リストには「1965年頃に耕耘機が普及し、1967年から除草剤パラコートの使用が始まった頃から関東地方を中心に爆発的に増加し〜」と載っています。つまり耕運機で根を切断されても農薬を散布されても、それをものともせずに繁殖しているということです。爆発的に増えたのはライバルである他の雑草が除草剤で枯れてしまったからです。そりゃ増えるわ。
イラスト:zassouneko