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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

ホトケノザ/春の七草を脱退する

ホトケノザ(仏の座)/シソ科/オドリコソウ属
在来種 越年草 花期は3〜6月 10〜30cm 別名サンガイソウ

名前の由来は、向かい合って付いている半円形の葉の様子が仏様の台座の形に見えるところからきている。台座と聞いて最初にイメージするのは蓮華座だろう。蓮の花を模した台座である。ところが蓮の花と「ホトケノザ」の葉はあまり似ているとはいえない。仏様の台座は10種ほどあるので該当するものを探してみた。「ホトケノザ」にふさわしいのは如来や菩薩が使用する蓮華座ではなく、天(吉祥天など)が使う荷葉座(かしゅうざ)という蓮の葉を模した台座ではないだろうか。花を仏様に見立てれば、台座の上に立っている姿のようにも見える。なぜ立っている姿かといえば上位の如来や菩薩や明王を差し置いて、下位の天が座るわけにはいかないではないか。

別名の「サンガイソウ」は「三階草」で、向かい合った葉が三段になって生えている様子を表したものだという。それぞれの葉に仏様が立っていると考えれば、無下には扱えまい。春になれば最初に天が姿を現して、寺への参拝を誘うのである。信心を忘れがちな庶民に御仏の存在を思い起こさせる装置のようだ。ついでにサンガイ(三階)と仏教用語のサンガイ(三界)との関連を調べたが何も見出せなかった。さすがに考えすぎだったようだ。

花は2種類ある。開く花と開かない花(閉鎖花)だ。意味の無いように思える咲かない花にもちゃんと理由がある。自家受粉を行っているのだ。開いた花で受粉するのは別の花の遺伝子を得るためで、もしそれが出来なかった場合には自家受粉で次の世代を作るのだ。準備万端で隙がない。

比較的知られている話だと思うが、春の七草の一つの「ホトケノザ」は、実際は「コオニタビラコ」のことであるという。この草ではないのだ。「コオニタビラコ」はタンポポのように放射状に葉が出てくるので、それを仏様の台座とみなしたらしい。しかし、それを言い出せばタンポポをはじめとする沢山の数の植物が「ホトケノザ」に該当するだろう。何故この草だけが「ホトケノザ」という名前を独占できたのか。いくら考えてみても「仏様(花)と台座(葉)が常にセットになっている草だから」という理由しか浮かんでこない。

春の七草を言いかえれば「セリ、ナズナ、オギョウ、ハコベラ、コオニタビラコ、スズナ、スズシロ」となり、残念ながら七五調にはならない。いつまでも「コオニタビラコ」に訂正しないのは五七五のリズムが崩れてしまうからだろう。これは「コオニタビラコ」が昔は「仏の座(ホトケノザ)」と呼ばれていたことも関係しているようだ。まあ「スズナ」は蕪、「スズシロ」は大根のことだから古い言い回しを残したと言っていいだろう。でも秋の七草の「キキョウ(桔梗)」は、万葉集では「アサガオ(朝貌)」と書いてある。つまりこちらは現在の呼び方に直したのだ。変更する、しないの基準はどこにあるのだろうか。
上の写真は12月の「ホトケノザ」。このまま冬を越して、春に花をつけるのだろう。
同時期に咲く植物に「ヒメオドリコソウ」がある。同じオドリコソウ属でよく似ている帰化植物だ。こちらは葉の形が三角に近い形で、密集して生えている。並べて写真を貼ろうとしたら「ホトケノザ」の写真が無かった。そこら中で見かける草だったので撮っていなかったのだ。

↓こちらは「ヒメオドリコソウ」

追記&訂正:2015.12.13/文章を追記、写真を追加しました。
イラスト:zassouneko
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