アメリカオニアザミ(亜米利加鬼薊)/キク科/アザミ属
ヨーロッパ原産の越年草。0.5cm〜1.5m。
1960年に北海道で帰化を確認。名前の由来はアメリカ産の「オニアザミ」という意味で、また「オニアザミ」の「オニ」は「棘のあるアザミ属」のことである。「アメリカ」と冠されているがアメリカ産ではなく、ヨーロッパ原産である。飼料などに紛れての非意図的な侵入と言われているので、北海道ではアメリカ産の飼料が多く使われているらしい。正確を期すために一部では「セイヨウオニアザミ」の表記もあるが、残念ながら「アメリカオニアザミ」の方が定着している。北海道を中心に全国に分布を広げている新しい帰化種である。
全体が棘だらけです。
棘が生えていないのは花びらぐらいです。
同じアザミ属の「ノアザミ」は山菜として有名で、棘は調理していると無くなってしまうという。また根をゴボウとして食べる場合もある。「アーティチョーク」もアザミの仲間である。この「アメリカオニアザミ」が急激に勢力を拡大しているのには理由がある。鋭い棘を持っているのがその要因だ。しかも棘は全身に及び、無いのは花びらぐらいだ。鋭い棘が全身を覆っているため触ることさえ困難である。軍手など役に立たないので分厚い皮手袋が必要だ。棘は「靴を突き破るほど」だという報告もある。もちろん家畜も食べない。山菜は栽培種ではないので、食卓にのせようとすると収穫や調理に多少の手間はかかる。ところが「アメリカオニアザミ」は食用としての収穫さえ困難である。そのため駆除なども容易ではない。環境省の要注意外来生物リストに載っている。
植物は逃げ出さないので、少し手で動かしてやれば気に入った構図で写真を撮ることが出来る。ところが「アメリカオニアザミ」は手で触ることができない。木の棒でも使えばなんとかなるのだが、街中で都合よく手に入るものでもない。常時携行するわけにもいかない。どうしてこんなに痛い植物がその辺にはえているんだ。栗のイガやウニのトゲなどは初心者向けだと思えてくるほどだ。何の初心者だか書いている本人もわからないが。
冒頭の写真は5月の末に撮ったものである。バス停の標識と較べれば大きさの目安になるだろう。ガードレールから車道側へとのびているのが分かるだろうか。去年はもっと大きく広がっていた。これから薄着になる季節でもある。自転車乗りやライダーの皆さんはご注意いただきたい。注意深く指先を近づけて、ゆっくりと針の先にふれても痛い。本当に驚くほどに痛いのだ。こりゃ無敵だわ。
写真を追加しました。(2015.12.12)
イラスト:zassouneko