在来種。つる性の多年草。花期は6〜9月。
さて困った。ヒルガオか外来種か。とりあえずヒルガオで話を進めます。
ヒルガオとアサガオの区別は、まず「咲いている時間帯が違うこと」というのはよく知られている。そしてヒルガオはヒルガオ属だがアサガオはサツマイモ属である。またヒルガオは多年草で種は出来ず根で増え、アサガオは1年草で種で増える。さらにヒルガオは在来種であるがアサガオは平安時代の頃に渡来した植物である。
「ヒルガオ」には面白い話があります。かなりの昔、中国語の辞典に「旋花」「打碗花」と書いてあるのは見た日本の学者たちは、これは日本の「ヒルガオ」に該当すると決めました。その頃の中国は文化や技術が進んでいたので、いろいろと参考にしたわけです。そして日本には「ヒルガオ」より小さなものが在来種として存在しており、そちらを「コヒルガオ」と呼ぶようにしました。ところがずいぶんと後になって、中国で「旋花」「打碗花」という種は、日本でいうところの「ヒルガオ」ではなく「コヒルガオ」にあたるのではないかと疑問の声があがりました。そう主張する理由には大きな訳がありました。なんと中国には日本でいうところの「ヒルガオ」自体が存在していなかったのです。昔のことですから、中国へ直接行って花を確認するということはできませんからね。つまり「ヒルガオ」は日本だけに生息する固有種だったのです。
明治以前は西洋文明に触れる機会は乏しく情報も限られてきます。なので中国の書物が知識の中心になります。日本の辞書、辞典は必ず資料として中国名を載せました。つまり「和名ヒルガオ、漢名は旋花、打碗花」と掲載したわけです。まあ一般庶民には関係の無い話ですが研究者は大変です。学者は原典も調べますので「ヒルガオ」の研究の資料に「コヒルガオ」を用いるという事態になります。昔は植物=薬草でもあったので、種が違えば正しい効能も期待できません。むしろ危険な状況になるやもしれません。
この問題が提起されはじめたのが1950年代頃のことですから、それまでの少なくとも数百年間に渡って出されたであろう図鑑や辞典の類は誤った漢名を使っていたことになります。ちなみに現代では「ヒルガオ=旋花、日本打碗花」、「コヒルガオ=小旋花、打碗花」となっているようです。
最後に「ユウガオ」「ヨルガオ」の違いについて触れておきます。「ヨルガオ」は「アサガオ」と同じヒルガオ科サツマイモ属、「ユウガオ」はウリ科です。この「ユウガオ」は巻寿司の干瓢(かんぴょう)で有名ですね。「ユウガオ」「ヨルガオ」は外来種です。ついでに「チョウセンアサガオ(2015.9.20記事)」はナス科の外来種です。「アサガオ」とついているのは花が似ているというだけのことで関係ありません。朝鮮から渡来したわけでもありません。「チョウセンアサガオ」の仲間は全体に毒を持っており、根をゴボウと間違えて食べてしまったりすると大変なことになります。別名の「キチガイナスビ」という表現の方が正解に近い気がします。「朝、昼、夕、夜」といろんなタイプがありますが日本の在来種は「ヒルガオ」だけです。
追記&訂正:読みにくかったので文章の表現を変えました。(2015.11.12)
イラスト:zassouneko