忍者ブログ

雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

シロバナマンテマ/言葉は記号〜手応えのない名前

シロバナマンテマ(白花まんてま)/ナデシコ科/マンテマ属
ヨーロッパ原産の帰化植物 江戸時代末期に渡来 1年草 花期は5〜6月 草丈は10〜40cmほど

同じナデシコ科の「サボンソウ」と間違えてしまった草である。余計な手間をかけてしまった。気を取り直して始めよう、などという穏やかな気持ちでいられたのは最初だけだった。これから登場する「ナデシコ科」の植物はほとんどが外来種であるので、和名を付けたのは当然日本である。それなのにどうもスッキリとしないのである。

まず始めに。「シロバナ〜」と付いているわけであるから、ただの「マンテマ」もある。ナデシコ科らしいピンク色をした草である。「シロバナ〜」はこれに対しての名前だろうと思ったら、ピンクの「マンテマ」が「シロバナマンテマ」の変種であるという。何じゃそりゃ。おまけに「サクラマンテマ」という鮮やかなピンク色をした花もある。一体誰が「マンテマ」のアイデンティティの中心なのか。何だかややこしいぞ。

気を取り直そう。それはそうと「マンテマ」とは何だろうか。「跡見群芳譜(跡見女子大)」にはこうある。「マンテマンはアグロステンマ Agrostemma(ムギセンノウ属)の転訛という(牧野)。別の説では、ハママンテマ A.maritima の種小名の転訛という(深津)」要は「いつの間にか訛っちゃたので、元の言葉が分からない」と、いうことだ。前者の「ムギセンノウ」は明治時代に小麦に混ざって北海道に侵入し帰化した「ナデシコ科」の植物で、漢字で書くと「麦仙翁」であるが、違う属(ムギセンノウ属)の学名を、同じ科に「マンテマ属」と付けるのも何だかなあ、である。後者の「ハママンテマ」は「ハマベマンテマ(浜辺まんてま)」のことらしいが、こちらも外来種である。それに「maritima」という学名は海に関連したものらしい。学名の参考にしていたサイトが文字化けするようになってしまったので確信はないが、個人のブログの記載と、浜辺に生える植物に多く見られる学名から、そう判断した。つまり「海辺で咲く」という意味らしいのだが、それでは街中で咲いているこの花の立場がないではないか。ついでだが「ハマナデシコ(ナデシコ属)/在来種(こちらも浜辺に咲く)」というのもある。これは許してやってもいい気がする。
写真:まだ花が咲く前の若芽。同じ「ナデシコ科」の「ハコベ類」に似ているような‥。
ナデシコ科の名前の系統はだいたい4つに別れるようだ。①ナデシコ②セキチク③マンテマ④それ以外である。②の「セキチク」は「石竹」と書き、これは漢名(中国語)も同じであり、名前の理由は葉の形が「竹の葉」に似ているからだという。だが、これは「ナデシコ」にも「マンテマ」にも当てはまる場合が多い。そして「石竹」の「石」の意味はというと、現在の中国語でも日本と同じような使い方をしているようで、重さの単位か鉱物の「石」のことである。これでは何で「石」が付いているのか分からない。「石」に何か他の意味があるのだろうか。そうでないなら、言葉の意味が変容したか、何かしらの故事来歴があるように思われる。
上の写真:多くの花が太陽の方向を向いているような‥。まあ程度の差こそあれ、ほとんどの植物は向日性を持っているといいますからね。「ヒマワリ」だって実際は言われているほど太陽を追っかけているわけではないようですし。 

「マンテマ属」に属する植物を「〜マンテマ」と名付けるのは納得するが、「ムシトリナデシコ(マンテマ属)」などと付けるからややこしくなる。「ムシトリマンテマ(マンテマ属)」というのもいるそうだ。植物の和名は学問的な正確さは要求されず、それは日本語における標準語のようなものと同じである。「正しい標準語」も「正しい地方言葉」も「正しい方言」もあるのだ。ある物を標準語と地方言葉とで違う呼び方をしても、どちらも正しいのである。植物が地方によって呼び名が変わるのは、ローカルルールなので問題はありません。ただ今回の件は公式なものだからなあ。

「マンテマ」には色々と振り回された。比較的最近の帰化植物なので、簡単な紹介と数点の写真で済むかと思っていたのに予想外の展開になった。とにかく、この中途半端な言葉の響きが妙に引っかかる。いっそのこと「シロバナンンヌングァヴ」とでもあったら諦めもつくのに。「マンテマ」とあると、つい「万手間」と漢字が思い浮かんでしまう。いかん、駄洒落を言いたくなった。嫁に止められているのに。
上の写真のパイロンがピンク色をしているのは、写真の色補正に失敗したわけではありません。これは明日(3月13日)行われる「名古屋女子マラソン大会」で使用されるもののようです。女子だからピンクかー。たまには時事ネタも絡めてみようと載せてみました。

写真:zassouneko
PR