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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

キュウリグサ/胡瓜にまつわる言い伝え

キュウリグサ(胡瓜草)/ムラサキ科/キュウリクサ属
在来種 越年草 花期は3〜11月 高さは15〜30cm 花弁は5枚

会いたかった雑草の一つである。「キュウリグサ」の名前の由来は、この草の葉から「胡瓜」の匂いがするという至極簡単な理由である。さっそく試してみたところ、少し青臭い草の匂い以外に、はっきりとした「胡瓜」の匂いを感じる。いやいや、ここはひとまず落ち着こう。こうあってほしいという過剰な思い込みによる錯覚ということもある。そもそも「胡瓜」の匂いなどは青臭いという表現でも誤りではない。なぜなら我々は「胡瓜」を未成熟な果実の状態で食しているからだ。それでは青臭いのも当然と言えよう。念のために近くに生えていた「コハコベ」の葉の匂いも嗅いでみる。こちらは青臭い草の匂いしかしない。ようやく結論が出た。この草は「キュウリグサ」である。

そこまで疑い深くなるのは「ハナイバナ(葉内花)」という、「キュウリグサ」にそっくりな花が同じ時期に咲くのである。「ハナイバナ」は「キュウリグサ」と同じ「ムラサキ科」だが、ハナイバナ属になる。花の色も同じ水色で全体の形も似ているのである。違うところは「葉内花」の漢字が表しているように、花は葉の脇に寄り添うように咲く。「ハナイバナ」は成長しても花と葉の位置関係は変わることはないが「キュウリグサ」は花だけが次々に茎から咲くのである。まあ一番確実な見分け方は葉っぱの匂いを嗅ぐことであるが。この匂いを嗅ぐという方法は中々便利で、「ニラ」と「ハタケニラ」を見分ける時もこの方法が役立つ。あえて言うなら「考えるな、五感で感じろ」というところか。

「キュウリグサ」の名前の元となった「胡瓜」は平安時代には日本に伝来していたようですが、古典文学などに取り上げられることはほとんどないようです。これは、その当時の「胡瓜」が苦くて不味くてどうしようもなかったからです。その一方で「苦瓜(ゴーヤ)」が食べられていたのは(九州などの南の地方のことですが)、薬として利用されていたからで、今では夏バテ予防の代名詞にもなっています。それに比べて「胡瓜」は、昔は毒があるとも言われており、あろうことか現代のギネスブックにも世界一栄養のない野菜として載っているほどです。人々はそんな植物に関心や親近感など持ちませんから、おそらく無視されていたのでしょう。「胡瓜」が食べられるようになったのは品種の改良が進んだ江戸時代の末期といいますから、昔から食べられていたというイメージがありましたが、間違いだったようです。そうなると河童の伝説にある「胡瓜が好物」という伝説も別の捉え方をしなければなりません。私たちが持っている認識を「苦くて不味い胡瓜を好む妖怪」という新たな意味に書き換える必要があります。それとも河童の胡瓜好きは近年の創作でしょうか。
江戸時代の武士はキュウリの断面が将軍家の紋章「三つ葉葵」に似ているため、食べないようにしていたという話を聞いたことがありますが、単に不味かっただけではないでしょうか。現在のキュウリの断面を見ても、まあ「三つ葉葵」に似ているっちゃ似ていますが、そっくりというわけではない。それとも昔のキュウリは今と違って、「三つ葉葵」に似ていたのでしょうか。
花の色が水色で中央がオレンジがかった黄色という、全体的にパステルカラーの優しい感じがする花である。ただ難点は花が小さ過ぎるということだ。私の気のせいかもしれないが、春の花は小さなものが多い気がする。寒い冬を乗りきった飢えた虫たちには、小さな花でも魅力的に映るのだろう。それに春の早い時期は生えている草の種類もさほど多くはない。つまり競争相手は少ないわけだ。これが夏ともなれば競争相手も増えるので、目立つように花が大きくなる。と考えているのだが気のせいだろうか。
「キュウリグサ」は市政資料館の庭にたくさん生えています。
別の場所で見つけたもの。これも「キュウリグサ」でしょうか。
写真:zassouneko
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