忍者ブログ

雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

カラスノエンドウのおもてなし

カラスノエンドウ(烏野豌豆)/マメ科/ソラマメ属
在来種 つる性の越年草 花期は3〜6月 若芽、若葉、果実(豆)は食べられる。正式名称(?)は「ヤハズエンドウ」

「カラスノエンドウ」は熟すと実(豆)と莢(さや)が真っ黒(黒=カラス)になることから、そう名付けられました。ただ「カラスノエンドウ」ではなく、「ヤハズエンドウ(矢筈豌豆)」と呼ぶほうが学術的にも正しいとされています。ですが、今までずっと「カラス〜」と呼んできましたので、そのままで話を進めます。学校の教科書にも「カラス〜」という記載もあるようですし。

「ヤハズ(矢筈)」とは、弓を射る際に、弦にひっかける矢の末端の部分にある小さな切れ込みのことで、この草の葉の先端がその「矢筈」の形に似ていることから付いた名前です。よく似た仲間に「ホソバヤハズエンドウ」というのがあるそうで、文字通り「ヤハズエンドウ」より葉が細いからということです。ただし葉の先端が窪んておらず尖っているということですから、それに「ヤハズ」の名を冠するのは変な感じがします。

雑草にしては花は大きくて美しく、なかなか見応えのある草です。ツル性でなく、真っ直ぐに伸びる草であったなら観葉植物として人気がでるのではと思いますが、同じマメ科には「スイートピー」という強敵がいますので前途は多難です。そういえば子供の頃に「カラスノエンドウ」を摘んだりした際に「なんだか手がベタベタするな」と感じたことを記憶しています。最近になってその理由が判りました。中心の茎から分岐して葉をつけた枝(正確にいえば、たくさんの葉がついている枝はそれ自体が1枚の葉で、これを複葉と呼びます)をのばしますが、花はその付け根に咲きます。その複葉の付け根に、メインの茎との接合を強化する托葉という部分があり、そこに蜜を出す「蜜腺」があるのです。昔の記憶にあった「手がベタベタする」のは蜜腺の蜜が手に付いたからですね。謎が解けました。

写真の丸の中が托葉で「蜜腺」があるはずですが、まだ蜜は出ていないようです。
どうしてそんな所から蜜を出すのかというと、アリをおびき寄せて他の虫を追っ払ってもらうためです。花にも蜜はありますが、こちらは蜜蜂や蝶々専用です。アリは植物を食べませんから、甘い蜜の報酬でボディガードを雇ったわけです。問題は街中では警備に充分な数のアリが集まらないことです。一昨年の夏前に、この花をスケッチをしようと思って折り取って持ち帰ったことがあります。コップに水を入れて机の上に置いていたのですが、翌日になって見ると、机の上にたくさんの数の小さな虫が落ちていました。どうやら花と一緒に虫も持ち帰ってしまったようです。数日後に再び訪れて注意深く観察してみると、驚くほどの数の虫が付いているのが判ります。虫に人気があるのですね。どうりでボディガードが必要なわけです。上の写真の「ヤハズエンドウ」が托葉から蜜を出していないのは 、まだアリが活動を開始していないからではないでしょうか。「啓蟄」は過ぎましたが、まだまだ寒い日が続いていますし、虫たちもそれほど活動的ではないようです。つまり、蜜を出すにはまだ時期尚早といったところでしょうか。

通常、植物は虫に食べられないようにするための物質を体内に持っていますが、この草は防御をアリにお願いすることにしたようです。そのためのおもてなしの蜜を作るようになったのですね。前述のように、アリが少ない土地では失敗しますけど、それでも大して影響もなく日本全土で繁栄しています。あ、失礼、北海道には生えていないという情報がありました。
追記(2016.3.16):「カラスノエンドウ」を撮影した場所の近くのお家の前にマメ科の白い花が咲いていました。おっ、これが「スイートピー」かと思いましたが、調べてみると「エンドウ豆」でした。よく見れば豆がついていました。話はかわりますが30年以上昔に「赤いスイートピー」という歌がありました。今回改めて歌詞を確認してみて一つ発見がありました。歌のパートの最後は「赤いスイートピー♪」で終わっていますが、これ「赤いスイートピー」である必要が全然ないんですね。歌われている季節が春だということさえ気をついていれば、他の花の名前でも問題ない歌詞なんですね。ただ、そうした場合は題名を変える必要はありますけどね。「赤」が女の情念で、「スイートピー」が内に秘めた黒い企み(可愛い花ですがスイートピーの実は毒です)を表している訳じゃないと思いますが。

「カラスノエンドウ」をいろいろと調べていて、とても驚いたことが一つありました。なんと、この「カラスノエンドウ」はネットショッピングの商品になっており、小さな苗が500円ほどの値段で売られています。小動物のエサなどに利用できるそうですが、売れるのでしょうか?需要があるから供給があるわけですが、雑草ですからね。その辺に生えていませんかね。川原に落ちている石を売るようなものですよ。つげ義春か。

写真:zassouneko
PR