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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

ノアザミ/日本では花までも控えめな性格?

ノアザミ(野薊)/キク科/アザミ属
在来種 多年草 花期は5〜8月 園芸用に改良されたものを「ドイツアザミ」と呼ぶようだ。

なかなかの大物の登場である。場所は国道19号の小川の交差点に近い駐車場の片隅である。思い返してみると数年前にも見かけた記憶がある。当時は外来の園芸種でも植えたのだろうぐらいの感覚だったのだ。久しぶりに通りかかってみると、また花が咲いているではないか。どうやら自生しているようだ。

「アザミ」は日本には50種ほどあるといい、そのほとんどに面白い特徴がみられる。それは生息地がとても狭い範囲にあるということだ。それは1つの県だけに生息していたり、「〜県の〜地方に生息する」というものも多い(国立博物館/植物研究部「日本のアザミ」参照)。これは良く言えば地方色豊かな植物であるということだ。これほどまでに地方ごとに根付いている植物は他に無いのではないか。だが例によって外来種も多く侵入している。20種ほどの外来種が日本では確認されているので検索してみたが、写真が見当たらないものも多く、よく分からなかった。この花を「ノアザミ」としたのは開花時期と分布状況からである。「ノアザミ」は日本に広く分布し、開花時期も5月と早いのだ。多くの「アザミ」は夏の終わりから秋にかけて開花するものが多いのである。外来種の可能性もあるが。

10世紀の「和名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)源順(みなもとのしたごう)編」という辞書に「阿佐美」という名で載っている。おそらく「アサミ」と呼ぶのだろうが、そのうちに「アザミ」」になったものと思われる。いつものことだが、なぜ「アサミ」なのかは不明である。まあ日本に古くから自生している植物であることは間違いない。学名に「japan」の文字が入っている。
注意していただきたいのは、「アザミ」という種の草はなく、すべて「〜アザミ」という名になる。その辺は「サクラ」と同じである。外来種と違い古くから人と共に歩んできた草である。この「ノアザミ」も食用としてだけでなく、漢方薬としても用いられてきた。また他の種の「モリアザミ(花期は秋)」は、その根を「山ごぼう」と称して売られていたりする。道の駅や高速のサービスエリアの売店などで見つけることができそうだ。
冒頭に「園芸種はドイツアザミと呼ぶ」と書いたが、それらは日本産の「ノアザミ」を改良したものである。なので、この「ドイツ」がどこからやってきて何を表しているのかは不明である。もともと「ノアザミ」は品種改良が容易な花であるらしく、自然に交配して新種を作り出すこともあるという。ここに生えている「ノアザミ」も園芸種として植えられていたものが定着したのかもしれない。「アザミ」の仲間は棘があるのが特徴であるが、今ここにあるものにはあまり生えていないようだ。園芸種であるならば、その生産過程において棘を無くすか少なくなるように改良した可能性もあるのだ。せっかくの武器を取り上げられてしまうとは可哀想な話である。下の「アメリカオニアザミ(外来種)」の防御っぷりに比べればはなはだ心もとない装備である。
上の写真:全身に鋭い棘をまとう「アメリカオニアザミ」。棘が無いのは花弁だけである。恐ろしい威力の棘は軍手ぐらいでは何の効果もないし、皮手袋も注意が必要だ。靴底を貫通するという体験談を農家のブログで見かけたほどである。

荒々しいほどの「アメリカオニアザミ」の棘に比べれば、弱々しい防御であるが気にすることはない。街中には葉を食べるような動物はほとんどいないだろうから。スズメは天敵から逃れるために人里を住み家にした。つまり人を利用しているのであるが、その割には一向に人慣れしない鳥である。そろそろ人に慣れてもいいと思うのだが。それはともかく、改良された「ノアザミ」もそれほど悩むことはない。人に関心をもたれるような花を咲かせることができるのだから、むやみと駆除されることはないだろう。日本の在来種でもあるので頑張ってほしいと思う。それにしても「アメリカオニアザミ」の過剰なまでの「棘」である。かえって人々の反感を買ってしまうのではないか。まるで「北風と太陽」の話のようである。

さて、ここまでこの花を「ノアザミ」として話を進めてきたが、少し不安な点もある。花期がずれているのである。通常は5〜8月ということであるが、この花の写真を撮ったのは2月の末である。つまり2ヶ月も早く咲き始めている。こりゃ他の花の可能性もあるかな。
追記(2016.3.21):アルバムを整理していたら2年前の夏に撮ったものが見つかった(上の写真)。撮ったことさえ忘れていた。それにしても葉っぱがほとんどない満身創痍の状態である。どうしてこうなった?虫か? ここから2年近く経った今の状態が冒頭の写真であるから、心配するほどのことでもないようだ。丈夫だなと感心してしまう。

写真:zassouneko
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