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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

ハランのことも気にかけてやってください

ハラン(葉蘭)/キジカクシ科/スズラン亜科/ハラン属
中国原産 常緑の多年草 花期は3〜5月 漢名:一葉蘭

ずいぶんと昔から日本にあったらしい。中国が原産地といわれているが、確実なことは分からないようだし、日本への渡来時期も不明である。それに「蘭」とついているが「ラン」とは関係がない。また花は地面にくっつくようにして咲くので、注意して観察しないと見落としてしまう。そういえば子供の頃から、よく見ていた植物であるが花を見たことはない。自らの存在を消しているかのような植物である。

そのかわりと言っては何だが、弁当のおかずの間仕切りや料理の色どりに使う緑色のポリエチレン製の「バラン」は有名である。昔は「葉蘭」を使用していたが、扱いが簡単で安価な化学製品に取って代わられた。なんで「ハラン」が「バラン」になったのかは色々な説がある。化学製品の「ハラン」、すなわち「人工ハラン」が「人工バラン」と濁点がついて呼ばれるようになり、「人工」が取れて「バラン」になったのだという。「バ」と濁るのは「連濁」という日本語の習慣である。「花冷え(ハナビエ)」や「手作り(テヅクリ)」と同じことである。「人工」を取ったのなら、素直に「ハラン」でもいいような気がするが、そうしないのは自然と人工のものとを一応は区別しているからなのだろうか。もしかしたら、元々の「葉蘭」の存在を忘れてしまったのかもしれない。

考えてみれば、どうしても料理に「バラン」を入れる必要は薄い気がするが、日本人の身体に染み付いた習慣のようなもので、無ければないで寂しい気持ちがする。葉や花や枝を料理の飾りに積極的に使用するのは日本独特のものであるらしい。他の国でも花を飾り付けに使ったりすることがあるようだが、葉や枝ともなると珍しいのではないだろうか。少し前にネットで見た外国人の質問が面白かった。旅館や料亭などで食事をすると、植物の葉や枝や花も一緒に出てくるが、どこまでが食べられるものなのかが分からないと疑問を呈していた。なるほどなー。日本人なら飾りだと分かるが、他の国では食べられないものを皿に載せることは少ないようである。もっとも日本でも桜餅の葉っぱを食べるのか捨てるのかが議論になったりするけどね。
植物で料理を彩るようになったのは江戸の中期あたりだという。高級料亭が出現して、贅沢な料理を色々と飾りつけて提供するようになったからだ。そんな豪華な食事でなくとも、刺身や肉の隣には緑のものがあったりすると、目にも鮮やかで食欲が増すような気がする。

「葉蘭」が料理の飾り付けに利用されたのは、幅広で丈夫で加工しやすいからだろうが、近代になって、別の利点として「抗菌作用がある」という報告もあるようだ。しかし、いくつか検索してみると、ヒットするのは総て同一の研究者の発表が元となった話である。まあ、論文まで発表しているのだから、虚偽ではないだろうが、ことさらに大げさに取り上げるのもどうかと思う。どこかで読んだが、この前のSTAP細胞などとは違い、こういった論文のほとんどは、別の研究者による追試や実験などは、行われない場合が多いらしい。他の研究者がそうしないのは、「ハラン」に抗菌作用があるからといって、人類の健康に著しい貢献をするわけでもないからである。だから我々は「焼き魚のコゲの部分を食べるとガンになる」とか、「赤ワインは心臓疾患の予防に役立つ」とかいった情報に右往左往するのである。

私などは「バラン」と文字だけを見ると、昔の東宝のモノクロの怪獣映画が頭に浮かんでしまう。ヒーロー物などより、怪獣が単独で出てくる方が好みなのである。

写真:zassouneko
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