ヨウシュヤマゴボウ(洋種山牛蒡)/ヤマゴボウ科/ヤマゴボウ属
北アメリカ原産。花期6〜9月。1〜2m。別名アメリカヤマゴボウ。
明治初期の1870年に薬として渡来したもので、茎は2mぐらいまで成長します。実は熟すと真っ黒に近い紫色になります。強烈な毒を持っていますので注意が必要です(後述参照)。大量に摂取すると、嘔吐、下痢、意識障害などを引き起こし、最悪の場合は死に至ります。
名前の由来は「西洋種の山牛蒡」です。もともと「ヤマゴボウ」という「ゴボウ」に似た根を持つ種が江戸時代以前に中国から渡来していました。それに対して「西洋から来た」ので「ヨウシュヤマゴボウ」としました。どちらも根が「ゴボウ」に似ていますし、しかも両者とも毒草です。「ヨウシュ」と聞くとその実の色から赤ワインを想像してしまいがちですが「洋酒」ではありません。「洋種」です。地方に行くとキク科のアザミの根を「ヤマゴボウ」と称して販売している場合があるそうです。本来の「ヤマゴボウ」は前述した中国渡来の毒草のことですから紛らわしい命名です。何しろ根の部分にある毒が一番強いからです。
キク科とヤマゴボウ科では見た目がまるっきり違いますので生産者が間違えることはないでしょう。野菜の「ごぼう」はアザミと同じキク科ですので毒はありません。地方によってはキク科の「オヤマボクチ」を山牛蒡と呼ぶ場合もあるそうです。消費者の混乱は深まるばかりです。
本来の「ヤマゴボウ(ヤマゴボウ属)」はその根から「商陸」という漢方薬をつくります。おもに利尿剤に用いるということです。毒にも薬にもなるということです。
「ヨウシュヤマゴボウ」は実が熟してくると稲穂のように頭が下がってきます。人に対して「どうぞ採ってください」と言わんばかりの体勢です。しかも「ヨウシュヤマゴボウ」は個体差がかなりあり50cmぐらいのものもあります。幼児や子供でも手が届きます。危険ですね。テレビの子供番組で「ヨウシュヤマゴボウ」を「ブルーベリー」と紹介するという前代未聞の出来事が2006年にあったそうです。
それ程の事態なのに事故があったとは聞きません。最近になって分かったことですが、実の部分にはほとんど毒が無いそうです。これは実の部分を動物に食べてもらい、その結果として遠くに種を運んでもらえるからです。毒があっては動物に敬遠されてしまいます。おそらく口に入れてしまった子供もいたと思いますが一安心ですね。ただ種は猛毒ですので注意が必要です。毒物は注意できますが、実際にはそれとは別の重大な被害が発生します。実の汁が服についてしまうことです。何しろ「ヨウシュヤマゴボウ」はインクベリー(Inkberry)とも呼ばれ、なかなか落ちないそうですから。この場合の被害者とは保護者のことですね。
写真を追加しました。(2015.12.12)
イラスト:zassouneko