多年草 花期8〜9月 別名:フタモジ、ミラ、コミラ
さて「ニラ」である。これを雑草として取り上げるのにはためらいがある。なぜなら野菜としての地位が確立しているし、街中に生えているものは誰かが種を蒔いた可能性が高い。だが2年連続して同じ場所から生えているのを見つけて、これからも自生していくだろうと判断した。身近な雑草の誕生である。同じような経過をたどった植物に「シソ(紫蘇)」がある。つまり「野生種」→「栽培種」→「逸出して野生化」の経過を辿っていることになる。まあ元に戻ったといえばいいか。
日本では、韮(漢名)に対して深江輔仁「本草和名(918)」、また源順「倭名類聚抄(934)」に和名「古美良」とある。また江戸時代の小野蘭山「本草綱目啓蒙22(1806)には「コミラ」「コニラ」「ニラ」「フタモジ(上総)」とある。結局のところ、名前の由来はわからない。「ミラ」とか「ニラ」と呼ばれていたのは確かなのだが、何故その呼ばれるようになったのかは分からないのである。
別名に「フタモジソウ(二文字草)」とあるのは「ニラ」と書くと2文字だからで、平安時代頃の「女房言葉」である。「ヒトモジ(一文字)」は「ネギ」のことで、「ネギ」を昔は「キ」と呼んでいたからだ(アオカモジグサ/2015.5.19参照)。
「古事記」や「日本書紀」にも「ニラ」についての記載があるというから、いわゆる史前帰化植物(古くから栽培されていた)か、遣唐使などによってもたらされた可能性もある。もともと東アジア原産の栽培種が日本にやってきたという。現在では中国やフィリピン、インドネシア、パキスタン、インドで栽培されているという。また野生種が東アジアやヒマラヤ、中央アジア、シベリアに分布して自生しているようだ。