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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

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ミントの逆襲/その1/ハッカとミントの違い

ミント/シソ科/ミント属
ヨーロッパ・アジア原産の帰化種 多年草 花期は8〜10月

今はまだ6月なので「ミント」の花が咲くまでには少し間があるが、あちこちで緑色の葉を茂らせているのを見ることができる。すっかり日本に馴染んでいて、はなはだ迷惑な雑草と化している。今のところ、環境省の「要注意外来生物」には指定されていないようだが、仲間入りするのも時間の問題のような気がする。冒頭の写真は「和蘭陀薄荷(オランダハッカ)=スペアミント」で、毎年のように道路脇の狭い隙間から生えてくる。

さて、「ミント」と「ハッカ(薄荷)」は何が違うのか。答えは日本産か外国産かの違いであって、中身は同じ「シソ科」の植物である。日本にはもともと在来種のミントともいえる植物が生えており、それを「ハッカ」と呼んだのである。つまり「ミント」と呼ぶ場合は、それは主に外来種のことを指している。英語だと「ハッカ(薄荷)」を「ジャパニーズミント」とか「ジャパニーズスペアミント」と呼ぶ。また日本では和名をつけることもあるので、「ペパーミント」などは「胡椒薄荷(コショウハッカ)」と呼ばれる。「ペパー=ペッパー=胡椒」である。

「薄荷(ハッカ)」は中国から来た言葉であるが、ずいぶんとおかしな名前である。「薄い荷物」とは一体何のことであろうか。そもそも「ハッカ」は食用としてムシャムシャと食べるような作物ではない。求められているのは「ハッカ」から採れる「ハッカ油」なのだ。この名前の由来は、大量の「ハッカの葉」(昔は荷車に山のように積んで運んだのだろう)を蒸留施設(農家個人で持つのは無理がある)に持ち込むと、帰る時には手荷物ほどの量の「ハッカ油」になったところからきている。それを昔の中国は「薄荷=荷物が薄くなる」と表現したのだ。

誰もが爽やかさを感じる匂いを植物が提供してくれるのだが、もちろん人のために作っているのではない。自らの身を守るための手段として、生み出した物質なのである。だが、その物質が人の役に立っている。漢方にも「ハッカ」は登録されており、いろいろな薬効がある。代表的な成分である「メントール」は、虫刺されや筋肉痛の薬に含まれており、爽やかな清涼感が患部を冷やしてくれる気がするが、実は錯覚である。同じように、お風呂に大量の「ハッカ油」を入れると、湯上りに寒気を感じるほどであるが、実際に冷えているわけではない。「メントール」が皮膚の神経を誤動作させ、体が冷えているように錯覚させているのだ。虫刺されや筋肉痛に直接効く成分は別に含まれている。

では、なぜ痒み止めに「メントール」が含まれているのかといえば、脳に錯覚を起こさせるためである。脳は皮膚に対する危険度(重要性)を「痛み>熱(冷)>痒み」の順に設定している。痛みは死に直結する危険もあるし、「熱(冷)」も度が過ぎれば、火傷や凍傷になり、皮膚に大きなダメージを与える。「メントール」が皮膚に清涼感を誤認させれば、脳の処理は「熱(冷)」を優先し、「痒み」は後回しになるので、結果として「痒み」を感じにくくなるのである。蚊に喰われた跡に、爪で「バッテン」をつけたりするのも、「痛み」で脳を錯覚させるためである。

写真:zassouneko
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