アフリカフウチョウソウ(阿弗利加風蝶草)/フウチョウソウ科/クレオメ属
熱帯アフリカ原産 1年草 学名:Cleome rutidosperma(クレオメ・ルティドスペルマ) 花期は8〜9月頃(資料がない) 草丈は50〜100㎝
1999年(平成11年)に神戸で確認された外来種。ごく最近の侵入である。観賞用とは思えないので牧草や貨物の中に紛れて日本に侵入したのだろう。「アフリカ」が付かない「フウチョウソウ」は園芸種としてすでにある。写真の花と違い、直立して大きな立派な花がたくさん咲く。こちらは南アメリカ原産である。「フウチョウソウ科」の植物は日本に1種だけある。鹿児島以南、南西諸島に自生している「ギョボク(魚木属)」という落葉性小高木がそれである。
「マメ科に似ている花だな」と思っていたが、上の写真の右上の花を見ればそうでないことがわかる。気づかなかった。また「三出複葉」「豆のような実」の存在がますます「マメ科」だと誤認させる。「マメ科」にあるような「ツル」は無く、茎は太くて硬いが、長くのびるので自立できず地面に横たわる。また茎を触ってみると少し角(稜)があるような感じがする。茎の断面は円ではなく、丸みを帯びた四角といったところか。
新参の雑草らしく、情報が少ない。学術論文を集めたサイトにこの草の論文が掲載されているのだが、それを見るのに登録をしてからのログインが必要となるため、ただの素人には敷居が高い。それはさておき、和名がどうして「風蝶」と呼ぶようになったかだ。この写真では分かりづらいが、前述の「ギョボク」や「フウチョウソウ」の花を見れば想像がつく。以前、記事にした「ハクチョウソウ(白蝶草)」と花の形がよく似ている。この花を見て「風に揺れる蝶々」を連想したのだろう。ところが「風鳥草」と記載しているサイトもある。「花鳥風月」からの連想だろうと思うが「風」と「鳥」では意味をなさないのではないか。
追加(2016.8.18):「風鳥草」と表記することに関して。面白いことを思いつきましたので、とりあえずご報告まで。オーストラリアには「フウチョウ(風鳥)」という美しい鳥が何種類か生息しています。「極楽鳥(ゴクラクチョウ)」とも呼ばれています。その中には「尾羽」に特徴があるものがいます。
左はおそらく「セイヨウフウチョウソウ」、右「フウチョウ(ゴクラクチョウ/正確な名前は不明)」。どうですか、似ていますか?写真は適当なものが見つかりませんでしたので、ちょっと分かりにくいと思います。「風鳥」「極楽鳥」で画像検索してみてください。花の雰囲気に似ている鳥がいるはずです。
大阪の堺市が去年(2015年)の
9月25日に配布した「報道提供資料」のPDFを見つけた。そこには「都市緑化センター」に咲いている「アフリカフウチョウソウが見頃です」と大書してある。「えー、外来種なのにその扱いなの?」「行政は外来種に対しては抑制的にならないといけないのではないの?」「大丈夫?」「各務原市の『オオキンケイギク騒動(記事参照)』の二の舞じゃないの?」と、ツッコミ所が満載である。これは明らかに行政がおかしいが、日本人の自然に対する考え方が問われている事例ともいえる。つまり、花が綺麗ならばどんな花でも見境なく受け入れるという、その行為の是非が問われているのである。「綺麗な花が好き」、「自然が好き」、「日本の自然を守ろう」は「=(イコール)」で結ばれないのである。あえて言うと「綺麗な花が好き=個人の単なる欲望、わがまま」、「自然が好き=個人の単なる嗜好、趣味」、「日本の自然を守ろう=オリジナリティの尊重、世界でも特定の地域にしか存在しない貴重な環境の保護」と言えるだろう。どれが重要かは多様性を考えれば一目瞭然であろう。
園芸種の「フウチョウソウ」を学名から「クレオメ」と呼ぶらしいが、正月になると日本全国に「アケオメ」が飛び交っているようなので、大晦日の「暮れおめ」と勘違いされそうである。
名前はともあれ「フウチョウソウ」は日本に縁がないと思っていたが、一つだけあった。スモークサーモンによく乗っかっている「ケッパー」がそれである。半つる性の低木で、その花の蕾を酢漬けにしたものが「ケッパー」だ。あれは蕾だったのか。この木は(分類方法によって違うが)「フウチョウソウ目(Capparales)フウチョウソウ科(Capparaceae)フウチョウボク属(Capparis)」に分類される。ラテン語の部分が「ケッパー、ケッパー」としつこいのである。
花がそれほど目立たないので「オオキンケイギク」のように人がこぞって植えるような事態にはならないと思う。それにしても、この場所にどこからやって来たのだろうか。「芽を出し花が咲いて種ができて運ばれる」の当たり前の繰り返しの結果なのだが、新たな植物を目にするのはいつも突然なので、不思議な感じがするのである。「どこからやって来たんだ」と。
写真:zassouneko