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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

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アオツヅラフジ/その1/清少納言も知っていた?

アオツヅラフジ(青葛藤)/ツヅラフジ科/アオツヅラフジ属
在来種 東アジア、台湾、フィリピンにも分布 落葉蔓性木本(藤本) 花期は7〜9月 別名:カミエビ(神衣比)、チンチンカヅラ、ピンピンカヅラ

6月頃に見つけた時は小さな葉をつけた弱々しい感じの植物だった。それが今では交差点脇の植え込みの一角を覆い尽くす勢いで繁っている。とはいえ、他の植物に巻きつこうにも背の低い「コマツヨイグサ」ぐらいしか生えていないので、両者が絡み合って大変な有り様である。「ツヅラフジ」は「葛藤」と書くが、それを「かっとう」と読むと「もつれ、悶着、争い」の意味になる。言い得て妙である。ここを通りがかる度に目につくので気にはなっていたが、葉っぱだけでは検索のしようがない。似たような葉はいくらでもあるのだ。8月に入ってから、ようやく花らしきものが咲いたので本腰を入れて調べることにした。外来種だろうと考えていたが、実は古い歴史を持った在来種であった。また草ではなく木だ。面白くなりそうだ。


深江輔仁「本草和名(918年)」では「妨己」に、「和名阿乎迦都良」。源順「倭名類聚抄(934年)」では「防已」に「和名阿乎加豆良」とある。「妨己(ぼうき)」「防已(ぼうい)」は中国での呼び名である。和名にある「乎」は現在では「こ」だが、「お」とも読める。明治の頃に「阿乎美村(あおみむら)」という村が愛知県の三河地方にあったそうだ。そうなると「阿乎迦都良」「阿乎加豆良」は「あおかつら」「あおかづら」だろう。それが「アオツヅラフジ」に変わったのである。

名前の「青」は「緑」のことで、この植物の「茎」が1年目は緑色であることを指しているという。もともと木であるから2年目には「茎=幹」は茶色くなるのだろう。だが、写真にはすでに薄茶色の茎もあるように見える。また、「生きているツルが緑であるから」という説もあるが、意味がよく分からない。この「ツル」とは先端部なのか、それとも全体を指しているのかが不明だ。総合的に考えると、1年目は全体が緑だが、2年目は茎が茶色くなる。だが、先端のツルは緑色のままだ、ということか。なにかスッキリとしない。

名にある 」と 味である。 はブドウ科の植物で「ヤマブドウ」とも呼ばれている。「蝦(えび)」とついていると、海中を漂う「エビ」と何か共通点があるように思うが、植物の方が先に「えび」と呼ばれていたのである。「えび色」とは濃い赤紫で、それは「葡萄」の実の色である。海にいる虫のような生物も似たような色を持っていたので、それに「エビ」と名付けたのだ。それはさておき、「神」と付ける理由がよく分からないのだが、「アオツヅラフジ」が漢方薬でもあることに関係があるのかもしれない。「アオツヅラフジ」は「神農本草経(今から1500年以上前の書物)」にも出てくるし、実際に薬効もあるのだが、それに「神」とつけるかなあ。いつ「カミエビ」とついたのかは不明だが、せいぜい「上(かみ)」じゃないのかな。それはそうと「ツヅラフジ」も「アオツヅラフジ」もリューマチ、神経痛、関節炎に効果があるという両者とも秋になればブドウのような実をつけるが、「アオツヅラフジ」は実にも薬になる成分が含まれているという記載があるので注意が必要である。

他の別名の「チンチンカヅラ」「ピンピンカヅラ」は、この植物をピンと引っ張って弾くと、そういった音が出るからである。ギターの弦のような感じか。いや、それより三味線の弦だと考えればいいのかもしれない。「チントンシャン」はよくある三味線の擬音であるし、「ピンピン」は「ペンペン」と似たような感じかな。「ペンペン草=ナズナ」は「三味線草」とも呼ぶのだ。とにかく柔軟性があり、強く引っ張っても大丈夫な植物なのだろう。

「古今集」や「枕草子」に記述があるとのことだが、調べたところ「青つづら」で載っている。これは今では「ツヅラフジ」のことだと言われているので、残念ながら「アオツヅラフジ」ではないようだ。また「万葉集」にも「ツヅラ(都豆良・黒蔦)」とあるが、どちらの植物のことなのかは分からない。清少納言さんは両者の区別がついていたのだろうか?

葉の形は様々だ。「アオツヅラフジ」は若い頃はハートの形(スペードでもいいが)をしている。けれど「ハート(スペード)型の葉」を画像検索しても正解にはたどり着けない。つる性植物の多くはそんな形をしているし、また成長するにしたがって葉の形は変わるからである。これが「つる性植物」の正体を分かりにくくしている原因の一つでもある。

この植物の名前はちょっと引っかかる。「アオ」は問題ないが、「ツヅラ」と「フジ」という「つる性」を意味するような言葉が重なるのは不自然な気がする。植物学者の牧野富太郎氏は「アオツヅラフジ」とするのは誤りで「かみえび」が正しいとしている。「ツル(ヅル)、ツタ(ヅタ)、カツラ、カヅラ、カズラ、ツヅラ、フジ」は入り組んでいて、どうもスッキリとしない。私が理解していないだけなのだろうか。

写真:zassouneko
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