ヒナタイノコヅチ(日向猪子槌)/ヒユ科/イノコヅチ属
在来種 多年草 花期は8〜9月 草丈は40〜90㎝ 漢名は牛膝
通常は「イノコヅチ」というと「ヒカゲイノコヅチ」を指す。その名前通りに日陰を好む。この辺りでよく見かける「イノコヅチ」は夏の炎天下を気にすることもなく穂をのばしているので「ヒナタイノコヅチ」(2015.5.23記事参照)であろう。
この植物もいわゆる「ひっつき虫」なのだが、人から好かれるタイプではない。「オナモミ(最近は外来種の『オオ(大)オナモミ』に駆逐されているようだ)」などは、子供にとっては手頃な大きさと重さがあり投げやすい。投げ合って遊ぶのにちょうどいいサイズである。服にくっ付いたとしても取るのは簡単だ。ところが「イノコヅチ」はゴマ粒のように小さい。野原や空き地などで遊んでいると、知らないうちに袖口や裾のあたりに大量にくっ付いていることがあるが、これが小さいので取りにくいのである。特に羊毛のセーターなんか来ていると悲惨なことになる。毛が絡み合って取りにくいこと甚だしい。終いには面倒くさくなってセーターの毛ごと強引にむしり取ることになる。長毛種のペットの散歩も十分注意が必要だ。自由気ままな猫の場合は諦めるしかないが。
どの地域が分からないがアジアっぽい写真を選んだ。水牛かもしれない。膝の部分が分かりづらいのでもう一枚。
瓜坊(うりぼう=猪子)。ちょっと「膝の感じ」は伝わらないかな。可愛さは伝わるけど。
「イノコヅチ」の漢名(中国名)である「牛膝(ごしつ)」は、この植物の節の部分を牛の膝に見立てたものである(上の写真参照)。そう名付けられた当時の中国の牛がどんな姿なのか皆目分からないので適当な写真を貼っておいた。白黒のホルスタインでないことは確かだろう。中国から「牛膝」という言葉が伝わる以前に、日本でもこの植物には名前がついていた。10世紀の初頭には「為乃久都知」「為乃久豆知」(両者とも発音は「イノクヅチ」だろう)などと呼ばれていたのである。今の言葉に直すと「猪子(いわゆるウリ坊)槌」である。植物の大きさからすると「ウリ坊」の方がしっくりくるが、国が違っても同じ偶蹄類の動物の選ぶところが面白い。だが、一つ大きな問題がある。「猪子槌」の「槌」の意味が分からないのだ。