カンナ/カンナ科/カンナ属
熱帯アメリカ原産の植物を品種改良した園芸種の帰化種(長い!) 多年草 花期は6〜10月 中国語では美人蕉 なのでカンナ科は美人蕉科である 学名はCanna indica hybrid
言うまでもなく「花の美しさ」のほとんどは花弁に負うところが大きい。葉が魅力的な植物もいるが、やはり主役は「花」だろう。人は花弁に魅了されている。
以前に「カンナ」については、ひどく同情的な気分で記事を書いた。普通なら庭園で大事にされるような花が国道脇の緑地帯にいわば「落ちぶれた」ような感じで生えていたことが哀れに思ったし、それにも増して花自体がひどく不揃いなのである。開花してから時間が経って萎れてきた訳でもない。この花弁のせいで花の形がよく分からないのだ。可哀想に思ったのは、それほど必死に生きていると感じたからだ。生活に追われると身だしなみにまで気がまわらないのと同じである。ところが、この花は日本の環境に適応しており、さほど苦労はしていないのである。
普通、花は一定の形を保つ。花弁が単純な形であったり複雑な組み合わせだったり、少し形がくずれたりしても全体としてみれば、これは「何々の花だ」とはっきり分かる。誤差はあるが基本の形からは、ずれないのである。ところが「カンナ」は誤差が大きい。そればかりか基本になる形さえ、よく分からない。すべての花が違う形をしていると言ってもいいだろう。園芸種だというのに、あまりにも不揃いである。
30本ぐらい咲いている中で一番形が整っているものを探してみた。これで全体の形が想像できる。それでも上の花弁は左に傾き、左右にある花弁も大きさが違う。
だが、こうも考えられる。植物自身にとってみれば「花」を完璧に仕上げることはさほど重要ではないということだ。花の顧客の多くは虫たちであり、虫は人間のような美意識を持ってはいない。ある程度の形であれば許容範囲だろう。
「ミツバチ(蜜蜂)」は紫外線を見ることができるようだ。それに対応するように、ほとんどの花(虫媒花)の花弁は紫外線を反射し、蜜のある中心部は反対に吸収するという。つまり、反射して明るい周辺部に囲まれた中央の暗い部分にお目当の蜜があるのである。鮮やかな色彩や素晴らしい造形など「ミツバチ」にとっては関係がなく、反射する周辺部と暗い中心部、それに甘い蜜の香りでもあれば、それで充分なのである。
花の美しさを問題にするのは人間だけである。それは虫たちにとっては理解できないことだろう。美しいからといって、それが何をもたらしてくれるのかと疑問に思っているに違いない。
写真:zassouneko