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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

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オオキンケイギク/その4/後日談

今年初めて「オオキンケイギク」を発見した空き地の近くに、広い駐車場のスペースにいくつものプランターを並べて花を育てているお宅があった。道路沿いに並べられた幾つかのプランターには「オオキンケイギク」が植えられている。ちょうど家主らしい方が花に水を与えており、突然で失礼かとも思ったが、少し話を聞いてみた。すると「オオキンケイギク」という名を知っており、しかも去年の内に空き地に咲いていた花から種を採ってプランターに蒔いたと、半ば自慢気に話しをするではありませんか。あー、完全にアウトです。「特定外来生物法」に完全にひっかかっています。えー、このままいけば罰金100万円は確実ですね。まあ私には関係の無い話だが、一応は植えてはいけない花だとやんわりと忠告をした。もちろん穏やかな口調で、丁寧な言葉を選択した上でね。年配者に逆ギレ(失礼「激昂」ですかね)されてはかなわないから。そうしたら木曽川の河原に山ほど生えているから、いいじゃないかとの返答。「オオキンケイギク」という名前を知っているのに、何で「特定外来生物」とセットで考えられないのかが不思議である。新聞やテレビで「オオキンケイギク」と出てくる場合のほとんどは「特定外来生物」としての被害の話題であるからだ。

他地域の方には分かりづらいと思いますが、「木曽川の河原に云々」には多少事情があるのです。東海北陸自動車道と木曽川が交差するあたりに、「アクア・トトぎふ」という高速道路からも出入りが可能な水族館も付随した有名なサービスエリアがある。この施設の東海北陸自動車道を挟んだ反対側が国営(!)木曽三川公園になる。この公園の中にある広場(行政区分は岐阜県各務原市)で、かつては「オオキンケイギク祭り」が行われていたのである。1998年に始まった祭りは途中で名称を変えたりしたが(行政にも外来種を前面に出すのはマズイとの判断があったのだろう)、2006年に「オオキンケイギク」が特定外来生物に指定されて完全にトドメをさされたのである。それとともに、巷でよくいう「黒歴史」も誕生したといえる。

実は「オオキンケイギク/その1」に外来種の駆除が進まない理由を別記事に書くと宣言して、一応は記事を書いたのであるが、あまりに悪口ばかりになってしまって掲載を諦めたのだ。悪口ばかりでは真意が伝わらないだろうから、もっと効果的に表現しないと。この国営公園で行われていた祭りはいい素材になりそうだ。それは、ただ花が綺麗だからという理由だけで、町をあげての祭り(当然、税金が投入されているだろう)にしてしまうとは、どういうことなのかという素朴な疑問である。それも昔(伝統、歴史)から生えているという花でもない外来種を文字通り「祭り上げ」てしまうとは。祭りとは宗教的な背景を持っているのが正統であって、それ以外のものはただの「賑やかし」であろう。「祭り」と名乗ってもいいが区別はつけるべきだ。「ヤマザキ春のパン祭り」では、白いお皿を年に一度、大量に発注されるフランスの地方の町が特需に浮かれているという話を聞いたことがある。いい話である。ちょっと脱線した。話を戻そう。ただ花が綺麗だからと浮かれて、それを祭りにまでもっていく、その情熱はどこから来るのか不思議でならない。時代によって美の価値観が違ってくるのは、女性の顔とか化粧で証明済みだろうに。

さて、最近の国営木曽三川公園はどうなっているのであろうか。簡単に検索してみると、個人のブログに「アメリカフヨウ(外来種)の花が咲き‥」とか「チューリップ(外来種)の間に紫色のムスカリ(外来種)が川の流れを表し‥」とか、うーモヤモヤする。花を好むのは結構だが、まさかこの感覚で日本の古典的な美意識や日本の自然を語ったりはしないだろうな。大量に植えられたチューリップに清少納言の美意識は何と応えるのか。また茶室の竹筒に一輪の野草を飾った利休はチューリップをどう見るのだろうか。そこに「もののあわれ」や「侘び寂び」があるのか。花を愛でる=日本の美意識ではないのだ。世界中の人は花を愛でるのである。

人は綺麗で大きな花が咲いていれば、刈り取るのをためらうのだ。これが外来種の駆除が進まない理由である。そして河原に大繁殖した「オオキンケイギク」のせいで、日本の在来種が追いやられているのである。その中に「カワラナデシコ」もいる。名前通りに「河原で咲く撫子」である。このナデシコは「ヤマトナデシコ」とも呼ばれ、清少納言も取り上げているほどで、その歴史は古く長い。それが木曽川の河原から消えようとしているのだ。ああ、そうか。最近巷でも「大和撫子」を見かけなくなったのは、「オオキンケイギク」が猛威をふるっているからか。日本の在来種と上手に共存できず、むしろ害を与えるばかりの「特定外来生物」であることを忘れないでいただきたい。

数種間後に再び冒頭のお宅の前を通りがかったが、「オオキンケイギク」がすっかり取り除かれていた。愛知県の公式サイトを確認するようにと助言しておいたのが効いたのだろう。

写真:zassouneko
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