カラスウリ(烏瓜)/ウリ科カラスウリ属
つる性の多年草 在来種 花期は7〜9月 漢名は王瓜 別名はタマズサ(玉梓)、ムスビジョウ(結状)
人が好んで食べることはないが「カラス」なら喜んで食べるだろうということから「カラスウリ」である。実際はカラスも食べないようだが。秋も深まると、オレンジ色をした美味しそうな実ができる。自然の恵みが目の前にあるのに、それを人が利用できないとは残念な話である
。ただ、毒があるという話は聞かないので食べようと思えば食べられるそうだ。味はゴーヤに似ているという。食用にはならないが、根、種、果肉は漢方薬として利用されてきた。特に根はデンプンを多く含み、それは天花粉(ベビーパウダー、汗知らず)になる。「天花粉」は「天瓜粉」である。根を掘り出してよく洗い、細かく砕いてミキサーにかければ比較的簡単にデンプンを得ることができる。あとは乾燥させればいい。
花にレースのようなものがまとわりついているが、それも花の一部である。「カラスウリ」は夜に咲くので、今は縮こまった状態である。暗くなればレースの部分が花の直径の倍以上に広がり、なかなか見ごたえがあるが、私はその状態の花を見たことがない。ネットで見た写真の受け売りである。さて、この花は「雌雄異株」だ。この写真の花は雄か雌かは不明であるが、実がつくのは当然雌の花である。「雌雄異株」と「夜に咲く」のはおそらく関係がある。「カラスウリ」は虫媒花であるので、競争相手のいない夜に花を咲かせれば受粉の確率が上がるのである。また、暗い夜に自らの存在を主張するには花を目立たせるか、香りを際立たせるかしかないが「カラスウリ」は前者を選択したようだ。
別名に「タマズサ(玉梓)」とあるが、南総里見八犬伝の「玉梓が怨霊」と同名である。
この「玉梓」は「怨霊」なので神出鬼没だ。なかなか使い勝手のよい「悪役」のキャラクターである。夜に不思議な姿で花を咲かせる植物の名を作者が借用したのだろうか。それとも物語のキャラクターの名を植物に与えたのだろうか。もともと「梓」とは木の名前であり、中国から伝わった言葉だ。「梓」は「シ」「あずさ」と読むが、読み方によって「木」の種類が変わるそうである。「シ」も「あずさ」もそれに該当する木は数種類あるという。ところで、別名の「玉梓」と「結状」は種の形を表しているという。写真を見ると「カラスウリ」の種の形は、正月のおせち料理などで見られる「昆布巻き」に似ている。そして、その帯の部分に三角形をくっ付けたような出っ張りがある。昔の人はこれを「打ち出の小槌」の形と見たようだ。「玉梓」の名はそれと関係があるのかもしれない。「結状」は「昆布巻き」のように結んだ形に見えるからだろう。
こちらが「キカラスウリ」の花と葉
「カラスウリ」の実はオレンジ色だが、黄色の実の「キカラスウリ」というのもある。全体的に似ているのだが微妙に違う。「カラスウリ」の花が細かなレースをまとっているのに比べ、「キカラスウリ」のそれは刺身のツマの大根のように見える。また、「キカラスウリ」の葉は光沢があり葉脈が目立つ。この両者の葉の形は刻々と変わる。最初、スペードの形であったものが、アサガオの葉のようになったりする。ブドウ科のような一部のツル性植物もそうである。だから見分けづらい。
追加&訂正(2016.9.24):一部文章を追記しました。
写真:zassouneko