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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

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シナダレスズメガヤ/今では厄介者

シナダレスズメガヤ(撓垂れ雀茅)/イネ科/スズメガヤ属
南アフリカ原産の外来種 多年草 花期は5〜10月 草丈は60〜120㎝

言い訳から入らせていただく。申し訳ないが名前が合っているかどうかの確証がない。まあ、写真の植物名が間違っていたとしても本文は「シナダレスズメガヤ」の説明である。なお冒頭の写真が2つに別れているのは、植物が細すぎるので全体を撮影すると何が写っているのか分からなくなるからである。撮影時期は2つの写真とも7月の上旬。

漢字の「撓垂れる」なんて初めて見た。それはともかく。日本には1959年から導入された草のようだ。南アフリカから北米に渡って帰化したものを輸入したようだ。葉が細くてしな垂れる。茎もしな垂れる。まあ、名前通りの植物である。「ウィーピング ラブ グラス(すすり泣く愛の草)」という意味不明の英語名がついている。どこが「すすり泣く」でどこが「愛」なんだろうか。キリスト教圏の名前だなあ、と考えるしかないか。まあ、名前の付け方で花に対する意識や考えが窺えることもあるので、それはそれで興味深いのである。

↑穂の出始め。撮影:5月上旬
色づいている実。撮影:5月上旬
↑穂の様子。撮影:7月上旬
↑こちらは「コスズメガヤ」。草丈は30㎝ぐらい。
こちらは「ヌカキビ」か「オオクサキビ」だと思う。穂の部分は「シナダレスズメガヤ」に似ているが、葉の部分が違う。

この草は法面(のりめん)の緑化や砂防用として近年(2007年)まで盛んに用いられた。根が土を掴む力が強いので、新しく切り開いた土地の斜面や河川の土手などに植えられることが多かったという。要は土砂崩れの防止である。思い返してみると地方の高速道路でよく目にしていた光景だ。道路脇の斜面に、こんもりと盛り上がるようにたくさんの草が生い茂っていたのはこれだったのだろう。なんで高速道路の斜面の草は、あんなに立派に生い茂っているのだろうかと、何となく気にはなっていたのだ。皆さんも高速道路を通り機会があったら斜面の草に注目していただきたい。ただ最近はこの草の利用を規制しているようなので新東名のような新しい区間などでは見る機会はないだろう。この草は育つ場所を選ばず貧栄養地でも砂地でも成育できるというから、大量の 石が混ざっている山を切り開いたような場所でも大丈夫なのだろう。そして種を数多く生産できるのが強みだという。つまり世話をしなくても勝手に増えるのである。しかも土止めまでしてくれるのだから人にとっては有難い植物だ。だが、そうそう良い事ばかりではない。

今、最も被害を受けているのは川原だという。上流から流されてきた種が砂地で育ち、その種がまた広がる。やがて砂地の部分から石の多い川原全体にまで広がっていく。また多年草なので一度育ってしまうと、翌年も同じ場所から芽を出すのである。石だらけの場所でも砂地でも育つので増える一方である。そうして川原に生息する在来の植物を圧迫し全滅させてしまう。また山間部に植えられた草は山火事を広げる要因になっているという。乾燥した冬などに火災が起きると、枯れた細い草は燃えやすいので広範囲に繁殖した土地などはあっという間に火が広がるという。

便利だと思って利用してきた植物だが、今では日本の環境にとっては脅威になっている。今では日本の侵略的外来種ワースト100に選ばれている。このリストは全生物(哺乳類、鳥類、魚類、昆虫など)を対象にしており、植物はその中の4分の1ほどを占めている。「シナダレスズメガヤ」はそこに堂々とランクインしているのだ。「すすり泣く愛の草」って、泣いているのは日本の在来種の方である。

写真:zassouneko
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