「力芝(チカラシバ)」の記事を書いている時にふと疑問に思った。「シバ」とは一体何なのだろうか。誰もが頭に思い浮かぶのは公園やゴルフ場の「芝」だろう。小さくて柔らかな葉が心地良く、見た目もキレイである。だが、「イネ科」には「◯◯シバ」と付く植物が多くある。「◯◯属」だけでも「ウキシバ属」「オヒシバ属」「ギョウギシバ属」「シバ属」「チカラシバ属」「トダシバ属」「メヒシバ属」などがある。植物の大きさも大小さまざま、姿形も当然違う。それなのに「シバ」という共通項で括られている。
一般に「シバ」というとイネ科シバ属の多年草の在来種のことをいう。野生のシバなので「野シバ」ともよばれ、日本全国に分布している。奈良の若草山で鹿にモクモクと食われているのがこれである。当然「芝生」としても利用されている。「お爺さんは山へシバ刈りへ、お婆さんは川へ洗濯に」の「シバ」は「柴(小枝の意味)」なので関係はない。ないと思う。うーん、発音が同じなのが気になるが、とりあえず関係ないことにしよう。偶然の一致であろう。
「シバ」に「芝」の漢字を使うが、これがどうも怪しいのである。「芝」の字を見ていて、中国にこの字があるのかと疑問が湧いた。日本には「国字」という日本で作られた漢字があるからだ。ところが、中国にも「芝」の字はあった。何だよ、と思ったが日本とは意味が違っていた。中国では「芝」はキノコのことを指すのである。一例として健康食品(何の効果があるのか知らんが)の「霊芝」がある。この名前は結構知られているんじゃないかな。これで「芝=キノコ」ということに納得していただけただろう。また、「芝」を「シバ」と読むのは日本だけで(当たり前か)、これを「国訓」という。けれども「シバ」という読みに、中国でキノコを意味する「芝」という漢字をあてた経緯は見つけられなかった。ともかくもそうなってしまったのである。
では「シバ」という言葉はどこからきたのか。重葉(シゲリハ)、滋葉(シゲハ)、小葉(サハ)、敷葉(シキハ)、また、植物学者の牧野富太郎氏は細葉、繁葉の意味ではないかと主張されているようだ。つまり、語源はよくわからないということになる。だが、ここに挙げた特徴の全てに当てはまる植物はというと、「シバ(野シバ)」しかないように思われる。葉が重なり、小さくて敷きつめられ、細くよく繁る植物なのである。冒頭の「◯◯シバ属」の植物だと、このいずれかの特徴に合致しないものがあるだろう。それなのに「◯◯シバ属」と名乗るのは変である。
これについては「逆に」考えてみることにした。つまり、「◯◯シバ属」の植物には本家である「シバ(野シバ)」の特徴のいくつかは見出すことができるので、分家としての「◯◯シバ」という名を与えたのではないだろうか。そうだとすると正確な「シバ」の意味は「野シバ」になるが、大きな意味でいうと「イネ科の一部の植物」ということになる。
何も証拠がないし、自分勝手にゴールを設定しているような結論だが、その点は本人も自覚しております。また、本家、分家という例えもおかしいような気もするが、素人なのでそこはそれ、目をつぶっていただきたい。