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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

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「とうがらし」を「唐辛子」と書いたのは誰だ?/その1/日本編

あの「トウガラシ」を「唐子」でなく「唐子」と最初に漢字で書いたのは誰なのか。

おかしなことを言い出したな、と思われるだろうがこれには訳がある。以下の文章をお読みいただきたい。
「おでんに欠かせない辛子、うどんに欠かせないのは唐辛子である。」
おかしなところはないように思われるだろう。では次の文章はどうであろうか。
「おでんに欠かせない芥子、うどんに欠かせないのは蕃椒(南蛮胡椒)である。」
お分かりだろうが「辛子」という字が使われていない。この「カラシ」は本来は「芥子」で、「とうがらし」は「蕃椒」なのである。それなのにいつの間にか「辛子」という字が使われるようになった。もともと日本語になかった漢字なのに定着してしまったのだ。そこが謎である。この漢字がいつから使われるようになったのか調べているのだがさっぱり分からないのである。

最初に。ここにあげた「和漢三才図会」や「本草綱目啓蒙」などは国会図書館のホームページから簡単に見ることができる。トップページからデジタルライブラリーへ移動して検索欄に書名を入れればいいのである。ページごとにJPEG画像としてダウンロードもできる。ただ、「農業全書」は早稲田大学のホームページから閲覧した。この中で私のオススメは「和漢三才図会」である。「人魚」を大真面目に解説していたりして時代の空気を感じさせる。残念なのは知識と教養が足りないので字がちゃんと読めないことだ。内容は半分も理解できないが絵を見ているだけでもそれなりに面白い。それに挿し絵や目次があるので便利である。この2つは今なら当たり前であるが当時としては画期的なことだったのだ。これ以降の書物でさえ挿し絵や目次がないものが多いのだ。その点、この本は項目を探しやすいのだが、いかんせん「あいうえお順」ではなく「いろはにほへと順」なのがちと面倒である。「和漢三才図会」の最初の1冊目が全体の解説で、2冊目が目次(インデックス)になっている。

日本での「トウガラシ」の最初の呼び名は「南蛮胡椒」だった。ちょっと変だなと思われるだろうが、そうなのだから仕方がない。その名残りが「柚子胡椒(ゆずこしょう)」である。この「胡椒」とは「青とうがらし」のことである。くしゃみが出る「ペッパー」の胡椒ではない。

元禄時代に成立した農書(農業の指南書)である「農業全書(17世紀末期ごろ出版)/宮崎安貞」には「とうがらし」は「蕃椒(ばんしょう)」という名で載っている。「南蛮胡椒」が「蕃椒」になったのだろう。ところで、この本は当時は大変な評判だったようで、あるサイトには水戸の黄門様や将軍徳川綱吉にも絶賛されたと書いてあった。

「和漢三才図会(1712年)/寺島良安」でも「トウガラシ」は「番(蕃)椒」という名で載っている。だが、その横に「たうがらし」と書いてある。そして「俗に云う南蛮胡椒は今に云う唐芥子」とある。ここで初めて「とうがらし」という言葉を確認することができる。つまり「とうがらし」の方が今風(江戸時代の話だが)の呼び方だということらしい。だが、あくまでも「唐子」であって「唐子」ではないのである。

「本草綱目啓蒙/1805年/小野蘭山」では「南蛮胡椒」も「蕃椒」も確認できなかった。「第十八冊(26〜28巻)」に韮や芥子が載っているので、ここら辺にあるかなと思ったがアテがはずれた。どこを探せばいいんだろうか。

現在の中国では「とうがらし」を「辣椒」という。この「辣」とは「ラー油(辣油)」の「辣」である。名前に関連性があるから原材料もすぐ分かる。日本だと「ラー油」は「トウガラシ油」になるが、この言葉を使うかどうかは日本人次第である。

さて、私が図鑑として思い当たる古典関係の書物は以上である。当然、他にもあるだろうが特に調べてはいない。美しい植物の姿を描いた書物は多いが「とうがらし」を画題にすることはほとんどないので、そうなると農業関連の書物を探すことになる。いくつかは検索したのだがデジタルデータとして公開されていないようだ。何かいい書物が見つかるといいのだが。
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