あの「トウガラシ」を「唐芥子」でなく「唐辛子」と最初に漢字で書いたのは誰なのか。
おかしなことを言い出したな、と思われるだろうがこれには訳がある。以下の文章をお読みいただきたい。
「おでんに欠かせない辛子、うどんに欠かせないのは唐辛子である。」
おかしなところはないように思われるだろう。では次の文章はどうであろうか。
「おでんに欠かせない芥子、うどんに欠かせないのは蕃椒(南蛮胡椒)である。」
お分かりだろうが「辛子」という字が使われていない。この「カラシ」は本来は「芥子」で、「とうがらし」は「蕃椒」なのである。それなのにいつの間にか「辛子」という字が使われるようになった。もともと日本語になかった漢字なのに定着してしまったのだ。そこが謎である。この漢字がいつから使われるようになったのか調べているのだがさっぱり分からないのである。
「とうがらし」と言えば「キムチ」であるが、昔は今ほど「キムチ」を見かけなかった気がする。幼少時の記憶に残っていないのである。「キムチ」が一般的になったのは「焼肉屋」がチェーン店化した以降のような気がする。いわゆる「ホルモン焼き」を看板にした飲み屋はあった気がするが、家族が外食で焼肉を食べるということはなかったのである。食べ放題もあるような大きな焼肉屋で最初に「キムチ」を知ったと思う。
「ごはんですよ」の「桃屋」が「キムチの素」を発売したのは1975年である。今から40年程前だ。「桃屋」のホームページで確認すると「白菜漬け」に「キムチの素」を混ぜると美味しい「朝鮮漬け」ができると書いてある。面白いのは「キムチ」になるとは書いていないことだ。なのに、なぜ「キムチの素」なのか。まあ、それはいいか。要は「キムチ」は一般にはそれほど知られていなかったということだ。一般の人は「朝鮮漬け」と認識していたのである。
気になるのは原料である。「キムチの素」には当然「とうがらし」が使われているが、それをどう表記しているのだろうか。昔のチラシのような画像があったのだが、そこには原材料が書かれていないのである。ああ、そうだ、原材料やカロリーや原産国を書くようになったのは比較的最近のことだ。これでは「とうがらし」が「唐辛子」か「唐芥子」かは分からない。うーん。
家にあるS&Bの「七味唐辛子」のラベルは「七味とうがらし」だが、材料名は「赤唐辛子」である。参考にはならないなあ。それにしても「トウガラシ」を「唐芥子」でなく「唐辛子」と最初に漢字で書いたのは一体誰なんだろうか。