イヌホオズキ/ナス科/ナス属
在来種 1年草 花期は6〜12月 草丈は30〜80㎝ 学名:Solanum nigrum
日本語別名:バカナス、ウシホオズキ・クロホオズキ・ヤマホオズキ・ヒタイホオズキ
漢名:龍葵(リョウキ)英名:Black nightshade, Garden huckleberry, Wonderberry
今は「ホオズキ」に「ズ」を使っているが、「ヅ」ではないかとの指摘も多くある。「ホオズキ」の語源が「ホホという名前の虫がつくから」とか「頬(ホホ)つき(突き)」とか「文月(ふみづき)」からきているという説があるからだ。そうなると、どの説でも「ほおづき」とならざるを得ないのである。では「ホオズキ」は間違っているかといえば正しいのである。「おいおい何を言っているのだ。おかしいではないか」と思われるだろうが日本語のルールがそうなっているのだ。
葉の幅がやや狭いので「アメリカイヌホオズキ」かもしれない。
これを一言で簡単に説明すると「稲妻」である。この字はカタカナだと「イナズマ」と書く。「ツマ」なのに「イナヅマ」とならないのだ。「青い稲妻」と聞いて頭の中に「青い稲の奥さん」の姿が浮かぶ者はおるまい。誰もが「雷(カミナリ)」のことだと理解しているのである。だが、元の漢字を知らずに発音だけ聞くと「ヅ」なのか「ズ」なのか分からない。そうした場合は「ヅ」を「ズ」と表記するというルールがあるのだ。「地震」も「ジシン」であって、「ヂシン」とは書かないのである。
「イヌホオズキ」を漢字で書けば「犬酸漿」になるが、これは間違いである。なぜなら日本で「ホオズキ」と呼んでいた植物は、中国語の「酸漿」の漢字を強引に当てはめただけであるから、「ホオヅキ」を「酸漿(中国語)」とするのなら、「イヌホオズキ」は「龍葵(これも中国語)」としなければならない。「酸漿」を「ホオズキ」と読むのだから、「龍葵」を「イヌホオズキ」と読んでも問題はあるまい。まあ「龍葵」では国民のコンセンサスが得られていないので、「犬ほおず(づ)き」もしくは「犬ホオズ(ヅ)キ」と書くしかないだろう。もちろん「犬酸漿」と書いても構わない。名前など正確でなくとも伝わればいいのである。
条件が良いと大群落を形成する。
この辺が日本語の面白いところである。規則が厳密でないが故のあやふやさが表現の広がりとなって感じられる。「犬酸漿」という小説の題名からは日本の古典的な怪談のイメージが浮かび、それが「イヌホオズキ」だとスリラーになり、「いぬほおずき」だと童話や昔話である。えーと、オレの感性が変なのかな。ただ、公文書などの正式な文章を書く場合は「イヌホオズキ」としなければならない。これは約束事である。
写真:zassouneko