ハナニラ(花韮)/ヒガンバナ科/ハナニラ属
アルゼンチン原産の帰化植物 多年草 花期は3〜4月 別名は「セイヨウアマナ」
油断していた。この草が「ハナニラ」だとは考えてもいなかった。春になってから、あちらこちらで見かけるようになったが、花が立派なので園芸種を誰かが植えたのだろうと思っていた。ところが、行く先々でやたら目につくので、ひょっとして自生しているのではないかと考えるようになった。もしかしたらと葉をちぎって嗅いでみると、青臭い中にも「ニラ」の匂いがする。これが「ハナニラ」か。これでは間違えるのも無理はない。「ニラ」は以前に取り上げており、誤食に関しても書いた。その際に「ハナニラ」という「ニラ」の匂いがする草があり、見分けるのが難しいと記した。「ハナニラ」の写真も見ていたが、頭の中で花の大きさを誤認してしまったようだ。なんせ「ニラ」と間違えるほどであるから、もっと小さな花だと思い込んでいたのだ。でも、これで「ニラ」「ハナニラ」「ハタケニラ」が出揃った。
明治の頃に南米アルゼンチンから観賞用として輸入されたが、その繁殖力の強さから日本に定着したようである。「ハタケニラ」も「ハナニラ」もすっかり日本に馴染んでいるから、環境が合っているのだろう。別名の「セイヨウアマナ」とは、在来種でユリ科の「アマナ」に似ている西洋種の花ということだ。アルゼンチンから来たのに「セイヨウ」とは、西に進みすぎてヨーロッパを通り越してしまったようだ。だが観賞用の花ならば「ハナニラ」より「セイヨウアマナ」の方がウケはいいだろう。
誤食に至るプロセスはこうだろう。花を見れば「ニラ」でないのは一目瞭然であるが、それでも間違えるのは花の時期に問題があるからだ。「ハナニラ」の花期は3〜4月なので、もう少しすれば花は終わり、葉だけになる。そのまま夏を迎えると、今度は「ニラ」の花が咲く。「ニラ」を収穫しようとして、ふと横を見ると花の咲いていない草がある。匂いを嗅ぐと「ニラ」のようであるから、ついでに収穫する。さて夕食の準備を始めるか。と、このような経過をたどると考えられる。