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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

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ムラサキハナナ/3つの名前で大混乱

ムラサキハナナ(紫花菜)/アブラナ科/ムラサキハナナ属
帰化種 江戸時代に渡来 1年草 花期は3〜4月

2017年の3月に「イオノプシディウム/ナズナの仲間たち」という記事を書いた際、参考にしたサイトに「別名をヒメムラサキハナナと呼ぶ」と記載があった。それで、その名前の元となった「ムラサキハナナ」という植物の存在を知ったのだが、まさか近所に生えているとは思わなかった。

18世紀の初頭、中国から「ショカツナ(諸葛菜/諸葛孔明が広めたとされている)」という名前で渡来しているが、この時は広まらなかったようだ。その200年後、昭和の初期に輸入されたものが定着し帰化して現在に至っているようである。

この花はいろいろな名前で呼ばれている。「ムラサキハナナ(紫花菜)」、「オオアラセイトウ(大紫羅欄花)」、「ショカツサイ(諸葛菜)」である。また「ハナダイコン(花大根)」とも呼ばれていたこともあったが、そう呼ばれる花が先にあったので使われなくなった。さて、今皆さんは「それがどうした」と思われていると察します。「エノコログサ」が「ネコジャラシ」、「イヌタデ」が「赤まんま」と呼ばれるように、別名があって何の問題があるのかと思っていらっしゃるでしょう。ところが問題があるのです。実はこの花、どれが本名なのか分からないのです。

道路脇の植え込みに咲いていた(冒頭の写真も)。

私は植物を調べる場合、5つの信頼しているサイトから始めるのですが、そこでも名前がまちまちなのです。「ムラサキハナナ」としているサイトは1つ、「オオアラセイトウ」は2つ、「ショカツサイ」は2つと見事にバラバラです。WikipediaとWeblio辞書は「オオアラセイトウ」が本命で、他の名前は別名扱いになっています。「オオアラセイトウ」が優勢なんですが、この名前がちょっと複雑な問題をはらんでいます。

「オオアラセイトウ(大紫羅欄花)」と「大」が付いているのは、それが付いていない「アラセイトウ」がいるからです。この「アラセイトウ」は「オオアラセイトウ」より約半世紀前に日本に渡来しました。この花は現在では「ストック」と呼ばれ、切花として有名なようです。どこかで聞いたことがあるような気がします。花屋さんで「ストック」と聞けば教えてくれるでしょう。それにしても「アラセイトウ」とは何のことでしょう。漢字で「紫羅欄花」と書きますが、どこにも「アラ」や「セイ」や「 トウ」が見当たりません。

さて、話は突然変わります。強引に変わらないと次に進んでいかないのです。文才の無さを思い知らされます。それはそうと、世間には「羅紗(らしゃ)」と呼ばれる「毛織物」があります。私はそっち方面がさっぱりなので上の空で話をしています。「サテン」も「リネン」も「ビロード」も何のことやらなのです。気を取り直して話を進めます。この「羅紗」はポルトガル語の「raxeta(ラセタ)」を訳したものです。ここで強引に「アラセイトウ」に戻ります。すいませんね、強引ばかりで。この「アラセイトウ」は「葉+raxeta=ラセタ」からきているという説があります。つまり「ハラセタ」→「アラセイトウ」ですね。この花の葉の手触りが「羅紗」の様だったためです。残念ながら確定している説ではありませんが。

こちらは山吹小学校の東にある公園の花壇に咲いていたもの。草丈が20㎝ぐらいのものもいくつか見られますので、毎年勝手に生えてくるのかもしれません。

「オオアラセイトウ」は「アラセイトウ」と同じ属で、しかも大きいので(何が大きいのかは分かりませんが)「オオアラセイトウ」なわけです。葉を触ってみると意外と肉厚で柔らかい感じがしますが、これが「アラセイトウ」と同じ程度のものかは分かりません。手触りなら「ケチョウセンアサガオ(毛朝鮮朝顔)」の方が優っていると思います。

「ムラサキハナナ」だと「アブラナ科ムラサキハナナ属」、「オオアラセイトウ」だと「アブラナ科オオアラセイトウ属」、「ショカツサイ」だと「アブラナ科ショカツサイ属」になったりするようです(wikipediaより)。何でこうなってしまったんでしょうか。それぞれの名前の派閥とかがあって、学会(よく知らんが)でお互いに主張しているんでしょうかね。

結局、どの名前にしても求心力に欠けているのが問題だと思います。「葉ラセタ→アラセイトウ」は当時の名前の成り立ちを尊重した意見ですが、今となっては分かりづらいし、だいいち本当にそうだったのかが確認できていません。「ショカツサイ」は中国の伝説がバックボーンにあり分かりやすいのですが大雑把過ぎて説得力がありません。「ムラサキハナナ」は見た目と実用性(食用)からということですが面白みに欠けます。どれも一長一短ですね。どれでもいいような気がしますが、こういうのは時間が解決してくれるんでしょうか。早く解決してもらわないと、3つの名前で検索しなければならないので面倒なんだよなあ。

写真:zassouneko
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