ナガミヒナゲシ(長実雛罌粟、長実雛芥子)/ケシ科/ケシ属
地中海沿岸原産の帰化植物 1年草/越年草 花期は4〜5月
名前の由来は果実の部分が細長いことによる。他のケシの実は球に近い形をしているが、「ナガミヒナゲシ」は一般のケシとは違う「長い実を持つ小さな(ヒナ)ケシ」ということである。英語でも「Long-headed poppy(長い頭のケシ)」という。
1961年に東京の世田谷で初めて帰化が確認されたという。春に花を咲かせ、夏になると種を作って枯れてしまう。だが、その種子は秋になると芽を出してそのまま冬を越し、次の年の春に花を咲かせる。成長途中で冬を越す、つまり耐寒性があるのだ。そして夏に枯れるという性質になったのは、原産地である地中海の気候と関連がある。地中海沿岸の夏は、雨は少なく乾燥しているが、冬は雨が多く寒さも厳しくない。つまり夏は暮らしにくいので、夏前に繁殖を完了させるという道を選んだのだ。
「ケシ粒ほどの大きさ」というのは、とても小さなことを表す比喩にもなっているが、その名の通り「ナガミヒナゲシ」の種子も小さい(「ノゲシ」の項参照)。だが、たくさんの種子を作り出すことができる。この花の分布を観察してみると、道路沿いに生息地を拡張していることから、種子は風に運ばれるだけでなく、自動車のタイヤなどにくっ付いて移動しているのではないかと言われている。それが事実ならば、風や動物に種子を運んでもらうのではなく、車を利用するという新しいパターンの登場である。