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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

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アルストロメリア/花はいるべき場所で咲く

アルストロメリア(百合水仙)/ユリズイセン科/アルストロメリア属
南米原産の帰化種(アルゼンチン、チリ) 多年草 花期は5〜7月

大正13(15年という説もある)年(1924年)に渡来、その後帰化したという。サラッと書いたが、いささか解説が必要である。まず、この花を「アルストロメリア」と呼ぶことは間違ってはいないが、正しいともいえない。例えば「江戸彼岸桜」は「バラ科→サクラ属→エドヒガン(江戸彼岸)」であるから、「サクラ」でも「エドヒガン」でも間違いではないが、種を問われたら「エドヒガン」と答えるのが正解となる。この「アルストロメリア」は「サクラ属」の部分にあたり、要は「アルストロメリア属」ということである。また「百合水仙」とあるが、これも正確ではない。「百合水仙」は「エドヒガン」に相当する部分であって、別の花の名前なのである。本来の「百合水仙」は花の地色が赤で、写真花と比べて、少し口がすぼまっているような形の花である。記載が無いのでハッキリとはしないが、大正13年に最初に日本にやってきたのは「百合水仙」ではないだろうか。何種類かがまとめてやって来たという可能性もあるにはあるが。

「アルストロメリア」の名付け親は「分類学の父」とも呼ばれる、スウェーデンのカール・フォン・リンネである。現在、学名にラテン語を使うのはリンネが提唱した規則の内の一つである。そのリンネが18世紀の中頃に南米を旅行した際に、ユリに似た花の種をいくつか採取し、それに「Alstroemeria(アルストロメリア)」という学名をつけた。これはリンネの親友の男爵の名前からとったという。またスウェーデンの植物学者の名前から付けたという話もあるが、これらのことから推測すると男爵が植物学者でもあったのではないか。同じ学問を志す者同士だから親友だったと考えられるからだ。南米にはこの仲間が60種ほどいるということであるから、そのすべてが「アルストロメリア属」に含まれる。

さて、この花の名前(日本語の)であるが、有ると言えば有るし無いと言えば無い。有るのは学名のみであるから、それを名前にするという手もある。おかしな名前をつけられるより、学名で呼んだ方がはるかに正確である。アメリカやヨーロッパはラテン語の下地があるから、学名で呼ぶことに抵抗がない。商品名としての名前をつけることはあるが、学名で呼んでいることが多いそうである。ここで紹介している花の学名は「Alstroemeria aurea Graham」と「Alstroemeria aurantiaca D. Don」の2つがある。2つある理由が分からないが、調べるのが面倒くさいので放っておく。最初の「Alstroemeria」は「アルストロメリア」で、次の「aurea」「aurantiaca」は「ゴールド、黄金、黄金色」の意味がある。ピンクの花の上に黄色の柄があるのが見えるが、おそらく「ゴールド」はこれを指しているのだろう。最後の「Graham」と「D. Don」は人名だと思う。そうなると「Alstroemeria aurea Graham」は「アルストレーマンさんの名前をもらった属の仲間で、黄金色の部分を持つ花としてグラハムさんが名付けた」ということになるが、そんな名前では呼びたくないなあ。
花がこれだけ立派だと、どうしても園芸種にしか見えないが、帰化しているのである。生えている場所を見ても、園芸種として育てられているとは思えない。まあ、昔はちゃんとした庭だったかもしれないが、今は荒れ果てている。こんな場所で咲いているのを見ると、気の毒な感じを受けるが、むこうは何も気にしちゃいないだろう。花は咲くべき場所で咲くのである。人の作った花壇だけが、彼らの住処というわけではないのだ。

この「アルストロメリア属」は、美しいだけあって、園芸種としての人気が高いという(特にヨーロッパでは)。日本にもたくさんやって来ていると考えられるが、帰化できたのは前述した「百合水仙」と、このピンクの花弁を持つ花だけらしい。話は変わるが、「百合水仙」はなんで「水仙」と付くのだろうか。「スズランスイセン(スノーフレーク)」という花があるが、それは花がスズランに、そして葉がスイセンに似ているからである。だが「百合水仙」はどこが「水仙」に似ているのか、さっぱり分からない。

写真:zassouneko
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