ノミノツヅリ(蚤の綴り)/ナデシコ科/ノミノツヅリ属
在来種 1・2年草 花期は3〜6月 草丈は10〜30㎝
4月も半ばになると春真っ盛りである。「ハコベ」と入れ替わるように「ノミノツヅリ」をそこら中で見かけるようになった。この時期は「ノミノツヅリ」がやたら目につく。なお、両者の見分け方は別記事でどうぞ(参照:ハコベに似ている植物の見分け方)。
大きさはこのぐらい。同じ「ノミノツヅリ」でも花の大きさが違う。
では、さっそく解答を。「ノミノツヅリ」とは「蚤の衣服(短衣)」のことである。と、言われても「はい、そうですか」と納得できるわけもない。いったいどこが服なんだ。
「綴る」の意味を検索すると
①欠けたり破れたところをつぎ合わせる。例:「ほころびを綴る」「書類を綴る」
②言葉をつらねて文章を作る。例:「文字を綴る」
③仮名やアルファベットを並べて単語を書く。例:「ローマ字で綴る」
「綴り」=「衣類」という意味は見当たらない。関係ありそうなものは「ほころびを綴る」ぐらいだ。この中だと「文字を綴る」が一番しっくりくる表現であるが、そう表現すると言われてきたから、なんとなくそう思うのであって、深く「綴」を考えたことはない。この文字、よく見れば「糸偏」である。「文字」と「糸」になんの関係があるのだろうか。
「綴」の左側の「糸」は「糸を撚(よ)る」という形を表した象形文字である。細長い和紙などに撚りをかけて紐状にしたものが「こより(紙縒り、紙撚り)だ。そして「綴」の右側の「又」は「糸をつなぎあわせる」という形を表している。化学繊維だと1本の長い糸を作るのは容易だが、綿などは糸1本が短い。短い糸をつなぎ合わせなければならないのである。「綴」という漢字は糸をつなぎ合わせ、それに撚りをかけるという一連の行為を表しているのだ。さて、こうしてできた糸を布にするためには織るという工程が必要となる。衣服を作るのは手間がかかる。この全てが昔は手作業だったのだ(今も一部残ってはいるが)。
「綴る(糸をつなぎ撚る)」という動作の結果が衣服になるのだから、それを「綴り」とよんだのである。動詞と名詞である。例を挙げると「マクドする」かな。ちょっと違うな。こっちは名詞から動詞だ。適当な例が思いつかない。うーん、「囁く(ささやく)」と「囁き」はどうかな。
ここまでくると「文字を綴る」の意味も理解できる。文字とは短い一本の線(つなぎ合わせる前の糸)の集合体である。その線をつなぎ、組み合わせて文字にし(=糸を撚る)、それを連ねて意味(利用できる)のある文章(長い糸)にするのである。
この東西に走る道路沿いは特に「ノミノツヅリ」が多い。画面手前から奥までが全部「ノミノツヅリ」である。車道側にある植え込みも同様である。
さて、「綴り」は解決したが、それがどうして「ノミの衣服」となるのかが分からない。多くのサイトで葉の部分を「衣服」としているのであるが、どうしたら服に見えるんだ? ここからは少し強引に考えてみたい。
衣服は昔から今のような形だったわけではない。初期の衣服は構造が簡単な「貫頭衣」である。これは封筒のような形をしており、底と脇の部分に頭と腕を出す穴があるだけの衣服である。袖などはない。それをスッポリと被るように着るのだ。後は腰を縄で縛って完成である。
この「貫頭衣」を「ノミノツヅリ」に適用してみよう。蚤の体は左右が平たく、横からだと「玉子」のような楕円形をしている。立っている状態を頭の方からみると体の厚みがほとんどない。潰した飯粒を立てたようである(例えが変で申し訳ない)。さて、ここからが本題(脱線?)である。「ノミノツヅリ」の葉を端の方から裏と表に引き剥がして封筒(袋)状にする。「ノミノツヅリ」の葉も蚤と同じく玉子型といえるので(やや強引だが)、両者のシルエットは似ている。そして、それを蚤に着せるのである。最後に「とてもお似合いですよ」と一言添える。
書いてすぐに失敗だったと気付く。これではどんな植物の葉でも「綴り」になってしまうのだ。「アリノツヅリ」「ゴキブリノツヅリ」などいくらでもできるではないか。だが他に説明のしようがないのである。困ったな。それに加えて「ノミノフスマ(蚤の衾=蚤の掛け布団)/ナデシコ科ハコベ属」という植物もいるのである。発見したら記事を書くということになるのだが、結果は見えているんだよなあ。
写真:zassouneko