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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

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ジンチョウゲの香りは幸せを運ぶ/2018.3.7

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ジンチョウゲ(沈丁花)/ジンチョウゲ科/ジンチョウゲ属
常緑低木 中国原産の帰化種 室町時代に渡来したといわれているが詳細は不明。また、中国原産と言われているが自生地がはっきりしていないという。

「ジンチョウゲ」の花が咲き始めた。それはそうと「ジンチョウゲ」の「ゲ=花」ってなんなんだ?「花」を「ゲ」と読むのか?検索してみると「ケ」とは読むようである。そうであっても「花」を「ケ」と読む漢字がさっぱり思い浮かばない。これが「華」なら分からんでもない。「華厳の滝」「蓮華(レンゲ=ハスの花)」「散華」など、「ケ」「ゲ」と読むものは多い。

「沈丁花」の「沈丁」とは「沈香(じんこう)」と「丁子(ちょうじ)」のことである。「沈香」とはお香の一種で「ジンチョウゲ科」の植物の樹脂からできている。この木は菌に感染したり傷ついたりすると樹脂を出して自らを補修するのである。その樹脂が長年経つうちに変化をして芳香を放つようになる。「沈む(しずむ)」と書くのは、樹脂が染み込んだ木部が重くなり水に沈むからである。「沈香」の高級品は「伽羅(きゃら)」という。

「丁子」とは「クローブ」から採れる香辛料である。花の蕾を乾燥させたもので、こちらもいい香りがする。「丁」は中国では「釘(くぎ)」と同義語で、蕾の形が「釘」に似ているからだそうだ。「釘」の漢字の右側にも「丁」の字がある。もちろん、この「釘」は昔のクギであって、今のものとは形が違う。中国の昔の「釘」の形は分からなかったが、日本のものは、うんと細長い三角形のような形をしており頭の部分が四角くて大きい。古い神社仏閣などの修復に今でも使われている。特殊なものなので鍛冶屋さんが一本一本手作りするそうである。
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蕾の色は「クローブ」のそれに似ているが、形はだいぶ違う。写真で見比べてみると「クローブ」の蕾はもっと丸っこい。

「丁子」の「子」は、植物が漢方薬などに使われる際の名前にたまに見られる。いろいろな材料を混ぜ合わせ、調剤したものは「〜散」「〜湯」「〜丸」になるが、「子」は生薬の原材料名につけられる。特に種の部分を使う場合に多い。朝顔(牽牛)の種が漢方薬になると「牽牛子(けんごし)」、オオバコの種を乾燥させたものは「車前子(しゃぜんし)」、狂言で有名な「附子(ぶす、ぶし)」 はトリカブトだ。「丁子」も同じことである。「ちょう」の「し」に濁点がつく理由は分からないが。

「丁子」は「T字」とよく混同される。偶然にも英語の「T」の形にそっくりで、しかも発音も似ているから誤認されやすい。「T字路(てぃーじろ)」もそうである。それで通じるので問題はないのだが、運転免許の学科試験にそう書いたら◯はもらえない。正解は「丁字路(ていじろ)」である。「丁」は「釘」で「子」は薬の原料と覚えておけばいいだろう。
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さて、この「ジンチョウゲ」、中国語だと「瑞香」と書く。「瑞兆(吉兆、良い知らせ)」の「瑞」である。この「瑞兆」は頻繁に起こるものではなく、天下を統合するような「天子」や「皇帝」、「王」の誕生を世の中に知らしめるような場合に現れるという。瑞獣の麒麟、瑞鳥の鳳凰、瑞雲などが現れるのである。「ジンチョウゲ」の「瑞香」も同じようなものだろう。これらの「瑞兆」は「茶柱が立つ」と比べるとスケールが違うのである。もしも日本国中で一斉に茶柱が立ったのなら、何かあるかも知れないと期待できるのだが、残念なことに今のお茶の多くはパックに入った粉末状のものが多いから茶柱が立たないんだよなあ。

なにはともあれ「ジンチョウゲ」はいい香りである。匂ってきたら「瑞兆」だと考えよう。散歩の途中などにどこからともなく芳香が漂ってくるというのも嬉しいものである。まあ、近所だと植わっているところは分かっているのだから、有り難みは薄いかなあ。

写真:zassouneko
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