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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

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白首烏(はくしゅう)/韓国の偽薬草騒動/その1

更年期障害に効くというふれこみの「白首烏(漢方薬/韓国名:ペクスオ)」を巡って韓国で騒動が起きている。騒動の中心は薬草を配合した商品とのことだ。更年期の女性の間では、ずいぶんと人気の商品らしい。後追い商品も含めて200品以上も流通しており市場規模も大きい。ところがその商品のほとんどから「耳葉牛皮消」が検出されたそうだ。本来ならば入る筈のないものなので健康被害が心配されているという。元の文章を読んでもはっきりとはしないが「偽白首烏」と書いてあるので、本来使用すべき「白首烏」のかわりに「耳葉牛皮消」を使ったようである。いまのところ「白首烏」も「耳葉牛皮消」も生薬名か植物名のどちらを指しているのかは判断できない。

早々とWikipediaに「白首烏」の項目が出来ていた。仕事が早いなあ。そこには「ガガイモ科」とある。日本の漢方薬の中に「ガガイモ/ガガイモ科ガガイモ属、和名/羅摩、生薬名/羅摩子(らまし)」と「イケマ/ガガイモ科カモメヅル属、和名/牛皮消、生薬名/記載なし」がある。和名(日本での呼び名)を見る限りでは「耳葉牛皮消」は「イケマ」の可能性があるが「ガガイモ」が「白首烏」ではなさそうだ。両者とも葉や根には毒があるようだ。まあ毒は薬にもなるので、そこは問題ではない。ただ、どちらの効能の中にも更年期障害の記述は無かった。そこが商品のキモだと思うのだが。

名前が同じで違う植物?漢字表記の落とし穴
「イケマ」の情報を調べている際に面白い記述を見つけた。「イケマ」の「カモメヅル属」を漢名で表すと「牛皮消属」になる。この属を見ていくと「C.auriculatum(牛皮消・耳葉牛皮消・飛來鶴・白首烏・隔山消・和平參)」と書いてある。「耳葉牛皮消」と並んで「白首烏」とある。学名の前に和名の記載がないのは日本には生えていないからだろう。学名の後ろにあるのは植物の漢名と別名である。続けて「C.bungei (白首烏・泰山何首烏・柏氏白前・戟葉牛皮消・地葫蘆)」との記載も見つけた。こちらにも「白首烏」がいる。いずれも「中国本草図録」からの引用だ。ちなみに日本の「イケマ」の項には中国名が見当たらない。これは同じ種が中国には自生していないからだろう。

前者(C.auriculatum)の場合には「耳葉牛皮消」と「白首烏」は同じ植物ということになるが、そうであればこのような騒動にはなるまい。記事の内容からすると後者(C.bungei)を使用しなければならないのに前者(C.auriculatum)を使ったとも読める。だが疑問も残る。ごく近い属の植物なのに健康被害をもたらすほどの薬効の違いがあるのだろうか。これは「偽」というより「誤」ではないのか。餃子の具を段ボールで代用するほどの違いではない気がするが。

ひょっとすると、まったく別の科の「白首烏」が存在していることも考えられる。別名を含めれば同名となる植物の例はある。もしそうなら、この騒動の原因は薬草の供給元とのコミュニケーション不足ということだ。この場合でも「偽」とまでは言いがたい。名前は合っているのだから、記事のニュアンスは「誤」でなければならない。

ここまでは「悪意なき誤解」という解釈で進めてきたが、悪意のある場合はどうだろうか。ほとんどの偽装は高価な材料を安価なものと置き換えるという手法をとる。車海老をブラックタイガーにすり替えるようなものだ。さて今回の事件の本質はどこにあるのか。他にもいくつか疑問点はあるのだが、いかんせんソースがこの記事だけなので結論は出ない。
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