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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

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ハマスゲの今昔/2018.10.3

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ハマスゲ(浜菅)/カヤツリグサ科/カヤツリグサ属
在来種 多年草 草丈は10〜40㎝ 花期は7〜10月 学名はCyperus rotundus 中国名は三稜草、香附子(こうぶし)

東警察署の近くの空き地に大量に生えていた。この雑草は他の場所でもちょくちょく目にしていて、カヤツリグサの仲間だと見当はついていたが、詳しくは調べていなかった。カヤツリグサ科は数が多く(80種類ほど)、調べるのが面倒だったのだ。

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大きさはこのぐらい。草丈は30㎝前後。

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植物のサイトに掲載されている写真と見比べて「ハマスゲっぽいな」とは思っていた。ただ、解説を読むと「浜の近くに生える(だからハマスゲ)」とか、「正倉院にも収められている(薬草として)」とある。生息場所は街中ではないし、正倉院で保管もされているとなれば、貴重で珍しい植物だと考えるのが普通である。それが街中の空き地にワサワサと生えているとは思いもしなかった。

結局、「街中でワサワサ生えているがハマスゲ」とした。今では厄介な雑草の一つらしい。なんだ、浜でなくとも路傍でも普通に生えるんだ。それはともかく。えー、この植物に日本人はずいぶんと世話になったきたようだ。薬草として利用したり、飢饉の時には非常食となって人々を助けてきたという。それが今では邪魔者扱いである。救荒植物として飢饉の時に活躍したのはすでに過去の話なのであった。

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葉っぱの様子。中央にはっきりしたラインがある。

中国名の「香附子(こうぶし)」とは漢方薬の原材料名である。精神を安定させたり生理痛などの婦人病に効果があるとされている。根茎を乾燥させたものを服用するのであるが、どのサイトを見ても煎じて飲むとは書かれていない。食用にできるからそのまま食べるのかな。

面白い情報もあった。「ショクヨウガヤツリ(漢字で書くと『食用蚊帳吊』だろう)」に関することである。この「ショクヨウガヤツリ」はヨーロッパ、北アフリカ原産の外来種で、1980年には栃木県で帰化が確認されている。「食用」の名前どおり根茎を食べる。それを「タイガーナッツ」と呼び、モデルの「道端◯◯さん」も愛用しているそうな。何の効果があるのかは知らん。時たま話題になる「スーパーフード」の一つだろう。そんな植物が帰化しているのである。つまりタダで「タイガーナッツ」が手に入るのだ。

ところが、そう簡単に事は進まない。栽培種は「ショクヨウガヤツリ」であるが、帰化して雑草化したものは「キハマスゲ(黄浜菅)」と呼ぶのである。名前が変わっただけじゃないかと思われるだろうが、手間暇かけて改良した栽培種と、それが野生(雑草)化したものとでは性質に違いが出るのである。現地に適応し帰化できた園芸種は、元々持っている荒々しい野生の姿を取り戻すのだ。まあ、栽培種でないからといって食えんことはないだろう。効果のほどは不明であるが。

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「ハマスゲ」の根茎。イモのような形をしている。

「キハマスゲ」が帰化していることは分かったが、それだと私が見つけた「ハマスゲ」も実は「キハマスゲ」だったということもあり得る。外来種は時に大繁殖するのである。困ったなと思っていたが、心配は無用だった。「キハマスゲ(黄浜菅)」は穂の部分が黄色(または黄緑色)なのである。「名は体を表す」のいい例である。おかげで赤茶色の「ハマスゲ」とは容易に区別できる。

別記事の「ヒメクグ/神話の世界へようこそ1〜3」にも「ハマスゲ」が登場します。

写真:zassouneko
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