在来種 多年草 草丈は50〜80㎝ 花期は8〜10月 学名はPennisetum alopecuroides 中国名は狼尾草
理科の実験で使用した試験管を洗うブラシに似ている。そんなはるか昔の中学校時代の記憶が残っているのは、試験管専用に特化した形状と機能性の高さが衝撃的だったからだろう。簡単に言えば「試験管を洗う以外にぴったりとくる用途が想像できない」ということだ。そりゃ記憶に残るわなあ。試験管洗浄用ブラシに見える人は他にもいるようで、同じ事を書いているサイトもあった。穂の構造は「エノコログサ」と似ているが、毛(芒=のぎ)が長く、黒っぽいので、どうしてもブラシを連想してしまうのである。
「チカラシバ(力芝)」の名前の由来は「根がしっかりしているので抜くのにとても力がいる」ということらしいが、なんだかとってつけたような理由である。そんなことを言い出したら、かなりの数の雑草がそれに当てはまってしまうではないか。同じイネ科の「オヒシバ(雄日芝)」も引っこ抜くのが難しいぞ。
中国では「狼尾草」、英語だと「噴水草」「狐の尾草」、学名の「alopecuroides」にも「狐の尾」の意味がある。なのに日本名は「力芝」である。せっかく個性的な容姿をしているのに。ちょっと残念である。何か他にあっただろうと思うが、頭をひねっても「ブラシ芝(刷毛芝)」しか思いつかない。「虎の尾」は他にいるしなあ。
上の文章で名前に文句をつけているが、考えてみると海外の名称は「見た目」だけで付けられている。それに対して日本の「チカラシバ」は、「抜くのに力がいるぞ」という植物を扱う際の注意点である。つまり離れた所から見ているだけではなく直接植物に手を触れているのだ。これは植物と人との関係性の深さを表しているのではないか。農耕民族の面目躍如である。
姿形はなかなか格好がいい。植物を構成しているラインが直線を基調としており、どこかスッキリした印象を受ける。植物自体もさほど大きくないので圧迫感も少ない。秋の庭のアクセントにちょうどいい気がする。と、集合住宅住まいが主張しても説得力はないのであった。
写真:zassouneko